・ゴルフ会員権贈与事件
〈事案〉
父が子にゴルフ会員権を贈与し、子がゴルフ会員権を取得するためにゴルフクラブに支払った名義書換手数料(本件手数料)が父と子どちらの取得費となるかが問題となった事案
〈判旨〉
所60条1項の文言を形式的に解釈すれば贈与の前後を通じて受贈者が引き続き資産を所有していたとみなされ、受贈者が資産の取得に要した費用(所38条1項)は無視されることになる。
しかし、譲渡所得に課税する趣旨は資産の増加益をその資産の所有者の所得として、所有者の支配を離れて他に移転することを機会に清算して課税するものである。所60条1項の趣旨は、贈与等にあっては、その時点では資産の増加益が具体的に顕在化しないため、増加益に対して課税繰延することにある。すなわち、取得費の範囲を限定するものではない。受贈者が贈与者から資産の取得のために要した費用は受贈者の保有期間中の増加益において計算される性質を有する。
よって、受贈者が贈与者から資産を取得するための付随費用の額は受贈者の資産の保有期間に係る増加益の計算において取得費に算入されるべき性質のものであり、本件手数料はこのような費用にあたる。

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