《論点》債務免除益は所得に当たるか
重判H24:所得税法において債務免除益が非課税とされた事例(大阪地判平成24・2・28)をベースにした論証
 所得税法は,23条ないし35条において,所得をその源泉ないし性質によって10種類に分類し,それぞれについて所得金額の計算方法を定めているところ,これらの計算方法は,個人の収入のうちその者の担税力を増加させる利得に当たる部分を所得とする趣旨に出たものと解される。このことに鑑みると,同法36条1項が,経済的な利益をもって収入する場合にはその利益の価額を各種所得の計算上収入金額又は総収入金額に算入する旨規定しているのは,当該経済的な利益のうちその者の担税力を増加させる利得に当たる部分を収入金額及び総収入金額に算入する趣旨をいうものと解すべきである。
 債務免除益について,債務免除は,債権者が債務者に対して有する債権を消滅させる行為であり,その結果,債務者が債権者に対して負担する支払義務が消滅するのであるから,所得税法36条にいう経済的利益に当たるというべきである。
 そして,(同じく資力喪失の場合の非課税規定である9条1項10号が資力の判定を直前の時期にしているから)債務免除を受ける直前において,債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であり,債務者が債務免除によって弁済が著しく困難な債務の弁済を免れたにすぎないといえる場合には,当該債務免除という経済的利益によって債務者の担税力が増加するものとはいえない。 (伝統的に課税実務で採られてきた理由付け)よって、 当該債務免除という経済的利益によって債務者の担税力が増加するものとはいえない部分は非課税になる。
☆あてはめPOINT☆債務免除を受ける直前において,債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難の判定基準
①債務免除を受けた者の資金調達能力
②保証人からの回収
③合理的な再生スキーム→きちんとした資産評価が行わた上で債務免除がなされている
④債務免除直前の債務総額
⑤債務免除後の債務超過額状態

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