・「退職給与」該当性(H21)恣意的な損金算入をさけるために、形式でなく実質的に判断する。
形式的な退職だけでなく、単なる分掌変更も退職に含まれる。ただし、給料の後払い的性格のある退職金債権が現実化していることが要請されるから、分掌変更が退職と同視される必要がある。
具体的には、役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情があると認められる場合には、退職金として支払われた金員を退職給与として取り扱ってもよい。dに対する役員報酬は,原告の決算の赤字が続いているにもかかわらず,平成13年10月に従来の月額75万円から月額95万円に増額されており,平成14年4月に月額45万円に減額されている経過は不自然であり,法人税の納付を回避することを目的とするものであるから,実質的に報酬の激減があるとはいえない。
分掌変更後も,経営上の重要な事項については経験豊富なdが決定していたと容易に推認できること,主要な取引先に対して代表者の交代の事実を知らせていなかったことなどからすると,dは分掌変更後も実質的に経営上重要な地位を占めている役員に該当し,原告を主宰していることに変わりがないので,実質的に退職したと同様の事情があるとは認められない。
締役を辞任した後も,常勤の監査役となっており,また,その配偶者と併せて,原告の株式の48.2%を有しているから経営の支配権を有している。
・事業主基準
事業主は資産勤労結合所得の性質をもつので、「享受する者」の解釈が問題になる。
所得税法12条の趣旨は、人的帰属につき形式と実質が相違している場合には、実質に即して帰属を判定すべきであるものとする。これを事業取引の観点から実質をみると、棚卸資産の真実の権利者が実質的に真実の取引主体がなるのであるから、「享受する者」とは、私法上の真実の取引主体である事業主のことをいうと解釈する。
あてはめPOINT
事業活動の基本となる出店の契約締結、開業資金の調達、営業内容、店舗設備の決定、仕入れ、売上の官吏、従業員の雇入れ等
・取引の解釈
外的要因に生じたものでなく、当事者の意図した資産価値の移転があれば足りる。
∵資産価値を喪失する者に対して適正な課税を行うことが法人税法22条2項による収益擬制の趣旨であるとすれば、資産価値が他の法主体へと移転することの認識があればよいと考える
多分増加益精算説的な説明なので書き直す必要がある
収益事業該当性の論証
2013年10月8日 《論証》租税法・収益事業(法人税法2条13号)
法人税法が、公益法人などの所得のうち収益事業(法人税法2条13号)から生じた所得について、同種の事業を行う内国法人との競争条件の平等を図り課税の公平性を確保するなどの観点から課税対象としている趣旨から、収益事業に該当するかは①対価性(何かの対価、喜捨的性格)②ほかの(民間)事業との競合性の観点から社会通念に照らして判断する(公益性とか)。
検討順序
①法人税法施行令5条1項の事業に該当する
②収益事業該当性
「事業」に業務が含まれるかの論証
2013年8月28日 《論証》租税法○雑所得にも所得税法56条が適用されるか。「事業」に業務が含まれるか検討する。
所得税法56条の「事業」には業務は含まれる。
∵事業に関連する場合にも必要経費不算入なのだから、当然に業務に関して配偶者などに支払った対価は必要経費不算入である(勿論解釈)。
○帰属所得(H23)
○定義
帰属所得とは、通常の市場取引の外において、自己の財産や労働に直接に帰せられる所得のことである。
○根拠
非課税となる根拠は、所得税法が所得を収入の形態で捉えている(所36条)から経済的価値が外から流入しなければ課税対象から除外することにしたと解するからである。
売上原価の見積もり金額損金算入の論証
2013年8月28日 《論証》租税法○売上原価
商品・製品・原材料などのいわゆる棚卸資産の販売による利益の計算において、最も重要な費用の項目は、売上原価である。
・牛久市売上原価見積事件
原価となるべき費用が未確定である場合に、金銭を見積もって損金に算入できるか否かが解釈上問題となる
〈事案〉
Xが土地を購入して造成し、宅地として販売したところ、その土地の売り上げ原価が損金に算入できるか争われた。この開発行為には茨城県知事の許可が必要であった。そのため、X社に対し排水路を整備するよう指導し、X社はこれを了承した。X社は牛久市の同意を得て、茨木県知事から開発許可を受けた。X社は、排水路の工費を1億4668万円と見積もり当該事業年度の土地の販売収益にかかる売上原価の額として損金に算入し、確定申告した。
検察官はX社が架空経費を計上したとして法人税法違反であるとして起訴した事案である。
〈判旨〉
売上原価は、費用(法22条3項2号)と違い債務確定が要求されていない。また、特定の収益に係る義務的経費は費用収益対応の原則から売上原価とすべきである。
∴近い将来に売上原価を費用とし支出することが相当程度の確実性をもって見込まれている場合は損金算入できる。
当該事業年度終了の日の現況によりその金額を適正に見積もることが可能であった。
∴費用として債務が確定していなくとも適正な見積金額を売上原価(法人税法22条3項1号)として損金に算入できる。
不動産所得と事業所得の区別
2013年8月28日 《論証》租税法○不動産所得と事業所得との区別(「不動産……の貸付け」の意義)
〈判断基準〉
不動産所得が資産性所得である。一方で事業所得は資産勤労結合所得である。両者の本質的相違点は、人的労務提供の有無にある。
したがって、不動産の貸付が事業として行われている場合でも、人的労務提供が伴わない場合や、人的労務提供が付随的なものに過ぎない場合は、その所得は不動産所得に該当する。
Exアパートや貸間業のように単に部屋を提供するだけで食事を提供しない場合は不動産所得である。賄つきの下宿のように食事を提供する等人的労務の提供を合わせて行う場合は事業所得又は雑所得である。
ゴルフ会員権の預託金請求権の論証
2013年8月27日 《論証》租税法・ゴルフ会員権の預託金請求権(譲渡所得か雑所得か争われた事案)
〈問題の所在〉
預託金制ゴルフクラブの会員が、そのゴルフクラブを退会し、預託金の償還を受けたが、その会員権の取得価額に比べると相当の損失が生じている。この場合、返還預託金額と取得価額との差額を譲渡損失として他の所得と損益通算することができるか。
〈論証〉
譲渡所得に対する課税は,資産の値上りによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得として,その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会に,これを清算して課税する趣旨のものと解される。
このような譲渡所得に対する課税の趣旨にかんがみると,同法33条1項にいう「資産」とは,一般にその経済的価値が認められて取引の対象とされ,資産の増加益の発生が見込まれるようなすべての資産を含むと解され,また,「譲渡」とは,有償であると無償であるとを問わず,一般に所有権その他の権利の移転を広く含むものと解される。
本件ゴルフ会員権は,いわゆる預託金会員制ゴルフ会員権であり,その法的性質は,①ゴルフ場施設の優先的利用権,②預託金返還請求権及び③会費納入義務等が一体となった契約上の地位であると解されるため、本件ゴルフ会員権は「資産」といえる
会員は,預託金の据置期間が経過するか否かにかかわらず,これらの権利義務関係を一体のものとして,一定の手続に従い自由に第三者に譲渡することができ,ゴルフ会員権に基づく法律関係から離脱するとともに,投下資本を回収することができることとされているから,本件ゴルフ会員権の第三者への譲渡が所得税法33条1項にいう資産の「譲渡」に該当する。」
「他方,預託金会員制ゴルフ会員権については,会員が,預託金返還請求権を行使する前提として,ゴルフ場経営会社に対し,ゴルフクラブを退会する旨の意思表示をすることを必要としており,かかる意思表示によって,ゴルフ場の優先的利用権やその後の会費納入義務などの権利義務関係は消滅し,ゴルフ会員権の内容としては,無利息でゴルフ場経営会社に据え置かれていた預託金の返還請求権を残すのみであると解されるゴルフクラブからの退会に伴って預託金返還請求権を行使することは,ゴルフ場経営会社に対する単なる金銭債権の行使にほかならないと解される。
「そうすると,譲り渡し人が取得した資産は,各種の権利義務が一体となった契約上の地位としての本件ゴルフ会員権であるのに対し,本件取引は,自らの意思で預託金返還請求権以外の権利義務等を消滅させた上,同請求権を行使したものであるから,両者の資産としての内容・性格は大きく異なっており,その間に差額を生じているとしても,これをもって所得税法33条1項にいう譲渡所得ということはできない。
そうすると,譲受人に係る損失は,譲渡所得の金額の計算上生じたものということはできず(雑所得の金額の計算上生じたものと解される。),したがって,他の所得と損益通算することはできないと解する。
したがって、(雑所得として計算され)譲渡所得の基因となる資産の譲渡により生じた損失には該当しないため、他の所得と損益通算することはできない。
ゴルフ会員権という権利の束をそのまま譲渡は譲渡所得
バラバラにしてしまうと別のものになってしまうから、譲渡所得にはならない。
通達を参考に論証を作ったほうがよかった・
資産損失の貸倒の必要経費算入(所51条2項)の論証
2013年8月26日 《論証》租税法資産損失の貸倒の必要経費算入(所51条2項)
①趣旨
納税者の担税力の喪失
②要件
①居住者の営む不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業
②その事業の遂行上生じた売掛金、貸付金、前渡金その他これらに準ずる債権の貸倒れその他政令で定める事由により生じた損失の金額
③その者のその損失の生じた日の属する年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上
③効果
債権の貸倒れその他政令で定める事由により生じた損失の金額を必要経費に算入する
④「債権の貸倒れ」の解釈(松山地裁平成17年4月26日)
債務者の資力の悪化を理由として貸倒損失を計上するためには、債権者の事業の遂行上生じた貸付債権等につき、その債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その弁済を受けることが困難であると認められる状況において、債務者に対し、債権放棄の意思表示をするなどして当該債権が法律上消滅した状態が当該年度中に生じること、又は、その債務者について事業閉鎖、所在不明その他これに準ずる事情が生じるなど、その資産状況、支払能力等からみて貸付債権等の全額が回収できないことが客観的に確実となり、法律上債権は存在するがその回収が事実上不可能である状態が当該年度中に生じることのいずれかが必要であって、特に当該貸付債権等について物的・人的担保があるときには、これを処分した後でなければ、事実上回収できない状態が生じたということはできないものと解するのが相当である。
〇 違法な支出の必要経費性(H21)
必要経費に該当するためには、それが事業活動と直接の関連をもち、事業の遂行上必要な費用でなければならないものと解される(所37条1項)。
∵ここには、「通常必要」といった要件は課されていない。
また、法は賄賂(刑法198条)等については必要経費に算入しない旨を明記しているが(所45条2項)、租税法律主義の観点から明文なく課税対象を広げることはできない。つまり、所45条2項に列挙されていない違法な支出は必要経費に該当するものと解される(限定解釈)。
そうすれば、必要経費算入されるべき要件は事業の遂行上必要な経費であればよい、つまり違法な支出であっても明文の除外規定なき限り必要経費に該当する。
もっとも、債務確定主義の見地から、私法上無効な支出の場合には債務の確定(所37条1項括弧書き)がないため必要経費に不算入になる。
☆補足☆:法人税法上での債務の確定
同様の議論が法人税法上もある。損金に関わる規定である法22条3項から債務確定を要するとする法22条2号括弧書き。
法人税法:年度帰属の論証
2013年8月25日 《論証》租税法○年度帰属
ある収益からどの事業年度に計上するかは、一般に公正妥当と認められる会計処理基準に従うべきである。
そこで、法人税法22条4項の解釈として、収益(損失等)はその実現があった時、すなわち、その収入すべき権利が確定した時の属する年度の益金(損金)に計上すべきものである。
もっとも、権利行使の可能性だけを唯一の基準とするのではなく、取引の経済的実態からみて合理的なものとみられる収益の計上の基準の中から継続してその基準によって収益(損失等)を計上している場合には計上を許容する。
遺留分減殺請求に対して価額による弁償がされた場合の遺贈の論証
2013年8月24日 《論証》租税法遺贈について遺留分の減殺請求がされた場合の法的効果については、これによって遺贈が失効し、受遺者が遺贈によって取得した財産は遡及的に遺留分権利者に帰属するものとされている。
遺留分減殺請求に対して価額による弁償がされた場合に遺贈の効果は、遺留分の減殺請求がされたことによりいったん失効した遺贈の効果が、価額弁償によって再度相続開始時にまで遡って復活し、遺贈の目的が被相続人から受遺者に直接移転することになるとする考え方の方が、価額弁償の効果について定めた民法一〇四一条一項の規定の文言にも、遺贈の遺言をした被相続人の意思にもよく合致し、また、法律関係を簡明に処理し得るという点でも優れているものといえるから、減殺の結果生じた遺贈の効果の消滅という法的効果が遡及的に発生しなかったことになる。
とすれば、本件土地の遺贈に対する遺留分減殺請求について、受遺者が価額による弁償を行ったことにより、価額弁償によって遺贈の効果が再度復活するものと解する以上、被相続人から法人に対する本件土地の遺贈に関しては被相続人に対してみなし譲渡課税(所59条1項1号)がなされることになる。
○寄附金(法37条)(H18)
・趣旨
法人の支出した寄付金は事業に関連するものと関連しないものの両方が含まれ両者の差異を把握するのが困難であるから一定の画一的基準によって限度額を定めたて損金不算入とした。
・要件
広告宣伝費や見本品の費用といった営業経費として支出されるものを除く
「金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与」をおこなった場合(法37条7項)→債権回収不能の場合に債権を放棄する場合など経済的利益の供与において合理的理由があれば寄附金とは見ない。
・効果
一般寄付金:「限度額を超える部分」(法37条1項)
完全支配関係のある内国法人に対する寄付金:「全額」(法37条2項)
↳損金不算入される
○債権放棄(適正所得算出説)
1 益金
法人税法22条2項は「無償による役務の提供」について、益金に算入されるとしている。無償による資産の譲渡等を益金算入しないと、独立当事者間で行われる取引との公平が確保できず、競争の中立性に反することから、経済的利益がないにもかかわらず適正価格での益金算入を定めた創設規定であると解する。
したがって、債権放棄も単なる債務免除益であるから公平が確保できず、競争の中立性に反する可能性があるため、「無償による…その他の取引」(法22条2項)として益金に算入される。
2 損金(H20)
寄付金(法37条1項)とは経済的利益の無償の供与のことをいう。
回収不能と認められない金銭債権について債権放棄がなされた場合は、原則として法人が行った無償による経済的利益供与であるから寄付金(法37条7項)に該当する。限度額超える部分は損金不算入である。
もっとも、債権放棄その他の損失を負担した場合、今後より大きな損失の生ずることを回避するためにやむを得ず行ったものであり、かつ、社会通念上も妥当であると認められる合理的理由がある場合はその債権放棄等は実質的にみて対価性を有しており無償とは言えず寄付金に該当しないこととされ全額損金算入される。
①法律上の不能②事実上の不能③子会社等債権の回収不能
貸倒損失の計上時期の論証
2013年8月23日 《論証》租税法○貸倒損失の計上時期(H20、H22)
損失(法22条3項3号)の計上時期の問題である。
・興銀事件
金銭債権の貸倒損失を「当該事業年度の損失」として、損金に算入するには、当該金銭債権の全額が回収不能であることが必要である。
∵恣意的な評価損の損金算入により課税所得金額の圧縮を図ることを防止する観点から、債権の評価損については原則として損金算入が否定されている(法33条1項)。したがって、貸倒損失と債権の評価損の損金不算入の調整を図るべきだからである。
そして、回収不能かは客観的に判断され、債務者の資産状況、支払い能力等の債務者側の事情のみならず債権回収に必要な労力債権額と取り立て費用との比較考量、債権回収を強行することによって、生ずる他の債権者とのあつれき等に経営的損失等といった債権者側の事情、経済的環境なども踏まえ社会通念に従って総合的に判断される。
☆債権者側の事情のあてはめPOINT☆
債権者側の事情としては信義則上やむをえない事情が必要である。
☆補足☆部分貸倒の意味
部分貸倒とは、金銭債権の無価値化が一部にとどまることをいう(租税法演習ノート21第二版p232)
〈短い論証〉
債権の一部が無価値となったかどうかの判断をするのは税務執行上困難であるから、部分貸倒を認めることができず全額が回収不能であることを要する。
そして、貸倒の評価には恣意的な評価が介入し納税者間の公平を害する恐れがあるので、納税者間の公平を害してもなお救済の必要が高いといえるような事情として債権者側の事情として信義則上やむをえない事情が要求される。
無償による役務の受け入れの趣旨の論証
2013年8月23日 《論証》租税法○無償による役務の受け入れ(明文なし)(H24)
法人税法22条2項に無償による役務の受け入れが明文されていない趣旨は、支出すべき費用が減少しその分だけ課税所得が増加するから益金の額として計上する必要がない。
・清水惣事件
〈事案〉
親会社が子会社に無利子融資をした事案である。
〈判旨〉(同一的価値移転説的な論証)
「役務提供」には、人的労務提供のみならず資産の融資なども含む。
本件の無利子融資も「役務提供」にあたる。
資産の無償譲渡、役務の無償提供は、実質的にみた場合には、資産の有償譲渡、役務の有償提供によって得た代償を無償で給付したのと同じである。正常な対価で取引を行った者との間の負担の公平を維持するために、収益発生事由として規定したのであるとする(2段階説)。
また、無利息融資の場合には通常の利息相当額が貸主から借主に移転することをもって経済的利益が顕在化することを貸主側の収益発生の根拠としている(同一価値移転説)。
よって、利息相当額を益金として計上する。
もっとも、借主から対価性を有する経済的利益または、経済的利益を手放す合理的理由がある等特段の事情があれば、適正な利率による利息相当額の収益は発生せず益金として計上しない。
本件では、商事利息(商法514条)である年利6%を適用する。
利息相当額は無償の経済的供与として寄付金(法37条7項)となるため、損金算入限度額内で損金に算入される。
問題点としては親会社が子会社に無利子融資を許すとこれでは、黒字会社が赤字会社に所得振替を許すことになり、人為的操作によって、法人税の減少をもたらすことになる。このような、所得振替を防止し、税額減少を抑止する必要がある。
○低額譲渡
・南西通商株式会社事件(低額譲渡が問題になった事案)
〈事案〉
ある会社がその代表取締役に対して取引先銀行の株式を低額譲渡したというものであった。この会社は株式の帳簿価額同額の対価を得ており株式の帳簿価額と同額の対価を得ており、株式譲渡に係る譲渡価額から譲渡原価を差し引くと課税所得がないものとして申告していた。
〈判旨〉
法22条2項に規定する無償による資産の譲渡又は役務提供に係る収益の額を益金に算入する趣旨は、収益とは外部からの経済的価値の流入であり、無償取引の場合には経済的価値の流入がそもそも存在しないことにかんがみると、この規定は正常な対価で取引を行った者との間の公平を維持し、同時に法人間の競争中立性を確保するために、無償取引からも収益が生ずることを擬制した創設規定であると解すべきである(適正所得算出説)。
本件の資産の低額譲渡は有償による資産の譲渡(法人税法22条2項)にあたる。もっとも、低額譲渡を認めると無償譲渡の場合との間の課税の公平を欠くことになり法人税法22条2項の趣旨に反することになる。
そこで、反対給付が資産の時価に照らして低額である場合であっても、譲渡時の適正価額を益金に計上すべきである。
時価と譲渡額との差額は実質的に贈与をしたと認められ寄付金の問題になる。
明文はない
↓
趣旨
↓
趣旨に反する
↓
低額譲渡も益金計上
法22条2項に規定する無償による資産の譲渡又は役務提供の趣旨の論証
2013年8月23日 《論証》租税法○法22条2項に規定する無償による資産の譲渡又は役務提供の趣旨
①適正所得算出説
法22条2項に規定する無償による資産の譲渡又は役務提供に係る収益の額を益金に算入する趣旨は、収益とは外部からの経済的価値の流入であり、無償取引の場合には経済的価値の流入がそもそも存在しないことにかんがみると、この規定は正常な対価で取引を行った者との間の公平を維持し、同時に法人間の競争中立性を確保するために、無償取引からも収益が生ずることを擬制した創設規定であると解すべきである(適正所得算出説)。
②同一価値移転説
無償取引の場合、相手方には通常の対価相当の利益が帰属することになるから、これに相当する価値が移転流出したことをもって、収益の実現があったものとみられるとする説
→要するに、寄付金に該当するような利益提供があったと考える。