《新司》平成23年 商法
2013年9月26日 新司過去問《商法》第1 ①について
1 本件自己株式取得の効力
(1) 本件自己株式取得は無効となるか。自己株式の取得が無効となるためには、軽微な違法まで無効とすると取引の安全を害するために無効原因は重大な違法に限られる。
(2) まず、甲社は特定の株主であるBから自己株式を取得しようとしている。甲社は公開会社であるから相続人であるBには162条は適用されない(162条但書1号)。そのため、定時株主総会においてB以外の株主も株式の買取請求を甲社に対してできる旨を通知しなければならない(160条2項、3項)。それにもかかわらず、甲社はB以外の甲社株主に甲社株主に対し第1号議案の「取得する相手方」の株主に自己をも加えたもの株主総会の議案とすることを請求できることを通知していない。
そのため、甲社は本件自己株式取得において160条3項に違反する。
さらに、「特定の株主」(160条1項)であるBは議決権行使をすることができない(160条4項)。それにかかわらず、第1号議案につきBが議決権を行使しているのは、160条4項違反である。
160条3項は株主平等原則(109条1項)を反映し株主間の公平を図るための制度であるから、160条3項違反は重大な違反といえる。また、160条4項も会社の自己株式の取得につき株主間の公平を図るために議決権行使を制限するのであるから重大な違反であるといえる。
よって、本件自己株式取得は無効であるといえる。
(3) 次に、本件自己株取得(157条1項)は財源規制(161条1項3号)に反し無効でならないか。資料②からすれば、5億円を上限として自己株式を取得することができる。
そして、462条1項の規定する責任額が効力発生日の分配可能額を超過する額でなく譲渡人が交付を受けた金銭等の帳簿価格全額であるのは取得が無効であることを前提とした処理である。自己株式取得(157条1項)は財源規制(161条1項3号)に反し無効である。
2 甲社とBとの法律関係
(1)まず、本件自己株式取得について甲社から財産規制に反して金銭の交付を受けたBは、交付された金銭である25億円を甲社に対して支払う義務を負う(462条1項柱書き)
(2)次に、甲社はBに対して本件自己株式取得は無効であり法律上の原因がないから不当利得返還請求(民法703条1項)ができるか問題になる。
Bは同時履行の抗弁権(民法533条)があるため法律上の原因があるといえそうであるが、462条1項が同時履行の抗弁権を排除していると解することができるため、法律上の原因がないといえる。よって、Bは甲社に仮に当該株式が返還されたら、その時点でBが取得できた価値を返還する必要があることから、返還時の株価である800円に基づき20億円の返還債務を負う。
第2 ②について
1 本件自己株式処分は無効であるか。
本件自己株式処分が無効であるためには、明文はないが取引の安全の観点から重大な違反に限るべきである。
2 定時株主総会に取消事由(834条)があり、無効ではないか。
まず、834条1項1号の取消事由に該当しないか。
定時株主総会において株主Dは質問をしており、Cには説明義務(314条)が生じる。それにもかかわらず、Cは「企業秘密」であると答え特に免責事由(314条但書、会社法施行規則71条)に該当しないのに説明を拒絶している。
そのため、314条違反という決議の方法の法令違反がある。
よって、、834条1項1号の取消事由に該当する。
次に、834条1項3号の取消事由に該当しないか。
「特別の利害関係を有する者」(834条1項3号)とは、議案の成立について多数の株主と共通しない特殊な利益を有し、又は、不利益を免れる者をいう。
Bは本件自己株式取得について多数の株主が反対していることから、多数の株主と利益が共通せず、本件自己株式取得につき市場価格25%を上回る価格で株式の買取を受けられるという特殊な利益をえている。
よって、Bは「特別な利害関係を有する者」といえる。
そして、Bが賛成したためかろうじて賛成が得られたのであるから、Bが賛成しなかったら賛成は得られなかったし、議案についても特別の利害を有する者であるB以外は株式を買取もされないのであるから著しく不利益を受けるといえ「議決権を行使したことによって、著しく不当な決議」がなされたといえる。
よって、834条1項3号の取消事由に該当する。
したがって、定時株主総会に取消事由(831条1項1号、3号)がある。
では、定時株主総会に取消事由があることが自己株式処分の無効事由になるか。
定時株主総会は会社の内部的な意思決定であり、内部的な意思決定に瑕疵があっても外部からは認識することが困難であるため、取引の安全が保護する必要が有り、軽微な違法にとどまる。よって、定時株主総会について取消事由があることは重大な違法といえず、自己株式処分の無効事由にならない。
3 本件自己株式取得が無効であることは本件自己株式処分無効原因にならないか。
本件自己株式取得は財源規制に違反するものであるが、財源規制違反は会社債権者を害するものであり、会社債権者保護は自己株式を無効とすることで達成できる。そして、本件自己株式処分を無効とすると乙者が売却した50株にも影響が生じ取引の安全を害する。そのため、重大な違法にはあたらず、本件自己株式取得が無効であることは本件自己株式処分無効原因にならない。
4本件自己株式処分は無効にならず、有効となる。
第3 ③について
1本件自己株式取得は分配可能額を超えるため、Cは業務執行者としてBが甲社から交付を受けた25億円ついて甲社に対して支払義務(462条1項柱書き)を負いそうである。
分配可能額を下回ったのは西日本事業部で架空売上げがあったためで、この手口は会計監査人ですら見抜けない巧妙なものであった。そして、甲社の内部統制システムには問題はなく、C自身も架空売上げを見抜けなかったことに過失はなかったのであるから、Cは「職務を行うについて注意を怠らなかった」といえる。
したがって、Cは「職務を行うについて注意を怠らなかった」といえる。
したがって、Cは免責され支払い義務を負わない。
2 Cは、平成23年3月31日時点で30億円の欠損が生じていることから、欠損責任を填補責任(465条1項3号)を負いそうである。。
架空売上に基づいて作成された貸借対照表である資料②から分配可能額は35億円であり、25億円の自己株式取得をしても欠損が期末に生じるとは予想し難いため、Cは「注意を怠ならなかった」(465条1項但書)といえる。
よって、Cは免責され填補責任を負わない。
3 本件自己株式取得につき甲社につき5億円の損害が生じている。Cには161条2項3項違反と、161条4項違反の者であるBに議決権を行使させた議事運営(315条)違反という法定遵守義務違反が有り任務懈怠(423条1項)が認められる。
そして、Cの任務懈怠と甲社の損害には因果関係があるため、Cは甲社に対して損害賠償責任を負う(423条1項)。
4 本件自己株式処分は株式の価格を時価から20%割り引いているため、甲社には、4億円のうべかりし利益があるといえ、甲社に4億円の損害が生じている。
Cには、第2号議案は乙社の賛成により「かろうじて」可決されており、Cが説明義務を履行していれば、第2号議案が可決されなかった可能性があり、説明義務違反(314条)という法令遵守義務違反が有り任務懈怠が認められる。
そして、損害と任務懈怠との間に因果関係が認められる。
よって、甲社に対してCは4億円に損害賠償責任を負う。
正直解説読んで書き直しました。
本番ではこれは無理。
知識的には自己株式の取得の手続きを補充して、書き方的なものは短く書く方法を少し練習する。
1 本件自己株式取得の効力
(1) 本件自己株式取得は無効となるか。自己株式の取得が無効となるためには、軽微な違法まで無効とすると取引の安全を害するために無効原因は重大な違法に限られる。
(2) まず、甲社は特定の株主であるBから自己株式を取得しようとしている。甲社は公開会社であるから相続人であるBには162条は適用されない(162条但書1号)。そのため、定時株主総会においてB以外の株主も株式の買取請求を甲社に対してできる旨を通知しなければならない(160条2項、3項)。それにもかかわらず、甲社はB以外の甲社株主に甲社株主に対し第1号議案の「取得する相手方」の株主に自己をも加えたもの株主総会の議案とすることを請求できることを通知していない。
そのため、甲社は本件自己株式取得において160条3項に違反する。
さらに、「特定の株主」(160条1項)であるBは議決権行使をすることができない(160条4項)。それにかかわらず、第1号議案につきBが議決権を行使しているのは、160条4項違反である。
160条3項は株主平等原則(109条1項)を反映し株主間の公平を図るための制度であるから、160条3項違反は重大な違反といえる。また、160条4項も会社の自己株式の取得につき株主間の公平を図るために議決権行使を制限するのであるから重大な違反であるといえる。
よって、本件自己株式取得は無効であるといえる。
(3) 次に、本件自己株取得(157条1項)は財源規制(161条1項3号)に反し無効でならないか。資料②からすれば、5億円を上限として自己株式を取得することができる。
そして、462条1項の規定する責任額が効力発生日の分配可能額を超過する額でなく譲渡人が交付を受けた金銭等の帳簿価格全額であるのは取得が無効であることを前提とした処理である。自己株式取得(157条1項)は財源規制(161条1項3号)に反し無効である。
2 甲社とBとの法律関係
(1)まず、本件自己株式取得について甲社から財産規制に反して金銭の交付を受けたBは、交付された金銭である25億円を甲社に対して支払う義務を負う(462条1項柱書き)
(2)次に、甲社はBに対して本件自己株式取得は無効であり法律上の原因がないから不当利得返還請求(民法703条1項)ができるか問題になる。
Bは同時履行の抗弁権(民法533条)があるため法律上の原因があるといえそうであるが、462条1項が同時履行の抗弁権を排除していると解することができるため、法律上の原因がないといえる。よって、Bは甲社に仮に当該株式が返還されたら、その時点でBが取得できた価値を返還する必要があることから、返還時の株価である800円に基づき20億円の返還債務を負う。
第2 ②について
1 本件自己株式処分は無効であるか。
本件自己株式処分が無効であるためには、明文はないが取引の安全の観点から重大な違反に限るべきである。
2 定時株主総会に取消事由(834条)があり、無効ではないか。
まず、834条1項1号の取消事由に該当しないか。
定時株主総会において株主Dは質問をしており、Cには説明義務(314条)が生じる。それにもかかわらず、Cは「企業秘密」であると答え特に免責事由(314条但書、会社法施行規則71条)に該当しないのに説明を拒絶している。
そのため、314条違反という決議の方法の法令違反がある。
よって、、834条1項1号の取消事由に該当する。
次に、834条1項3号の取消事由に該当しないか。
「特別の利害関係を有する者」(834条1項3号)とは、議案の成立について多数の株主と共通しない特殊な利益を有し、又は、不利益を免れる者をいう。
Bは本件自己株式取得について多数の株主が反対していることから、多数の株主と利益が共通せず、本件自己株式取得につき市場価格25%を上回る価格で株式の買取を受けられるという特殊な利益をえている。
よって、Bは「特別な利害関係を有する者」といえる。
そして、Bが賛成したためかろうじて賛成が得られたのであるから、Bが賛成しなかったら賛成は得られなかったし、議案についても特別の利害を有する者であるB以外は株式を買取もされないのであるから著しく不利益を受けるといえ「議決権を行使したことによって、著しく不当な決議」がなされたといえる。
よって、834条1項3号の取消事由に該当する。
したがって、定時株主総会に取消事由(831条1項1号、3号)がある。
では、定時株主総会に取消事由があることが自己株式処分の無効事由になるか。
定時株主総会は会社の内部的な意思決定であり、内部的な意思決定に瑕疵があっても外部からは認識することが困難であるため、取引の安全が保護する必要が有り、軽微な違法にとどまる。よって、定時株主総会について取消事由があることは重大な違法といえず、自己株式処分の無効事由にならない。
3 本件自己株式取得が無効であることは本件自己株式処分無効原因にならないか。
本件自己株式取得は財源規制に違反するものであるが、財源規制違反は会社債権者を害するものであり、会社債権者保護は自己株式を無効とすることで達成できる。そして、本件自己株式処分を無効とすると乙者が売却した50株にも影響が生じ取引の安全を害する。そのため、重大な違法にはあたらず、本件自己株式取得が無効であることは本件自己株式処分無効原因にならない。
4本件自己株式処分は無効にならず、有効となる。
第3 ③について
1本件自己株式取得は分配可能額を超えるため、Cは業務執行者としてBが甲社から交付を受けた25億円ついて甲社に対して支払義務(462条1項柱書き)を負いそうである。
分配可能額を下回ったのは西日本事業部で架空売上げがあったためで、この手口は会計監査人ですら見抜けない巧妙なものであった。そして、甲社の内部統制システムには問題はなく、C自身も架空売上げを見抜けなかったことに過失はなかったのであるから、Cは「職務を行うについて注意を怠らなかった」といえる。
したがって、Cは「職務を行うについて注意を怠らなかった」といえる。
したがって、Cは免責され支払い義務を負わない。
2 Cは、平成23年3月31日時点で30億円の欠損が生じていることから、欠損責任を填補責任(465条1項3号)を負いそうである。。
架空売上に基づいて作成された貸借対照表である資料②から分配可能額は35億円であり、25億円の自己株式取得をしても欠損が期末に生じるとは予想し難いため、Cは「注意を怠ならなかった」(465条1項但書)といえる。
よって、Cは免責され填補責任を負わない。
3 本件自己株式取得につき甲社につき5億円の損害が生じている。Cには161条2項3項違反と、161条4項違反の者であるBに議決権を行使させた議事運営(315条)違反という法定遵守義務違反が有り任務懈怠(423条1項)が認められる。
そして、Cの任務懈怠と甲社の損害には因果関係があるため、Cは甲社に対して損害賠償責任を負う(423条1項)。
4 本件自己株式処分は株式の価格を時価から20%割り引いているため、甲社には、4億円のうべかりし利益があるといえ、甲社に4億円の損害が生じている。
Cには、第2号議案は乙社の賛成により「かろうじて」可決されており、Cが説明義務を履行していれば、第2号議案が可決されなかった可能性があり、説明義務違反(314条)という法令遵守義務違反が有り任務懈怠が認められる。
そして、損害と任務懈怠との間に因果関係が認められる。
よって、甲社に対してCは4億円に損害賠償責任を負う。
正直解説読んで書き直しました。
本番ではこれは無理。
知識的には自己株式の取得の手続きを補充して、書き方的なものは短く書く方法を少し練習する。
《新司》平成21年 商法
2013年9月19日 新司過去問《商法》第1 設問4
1 合併契約の締結や当該合併契約の承認を目的とする株主総会(会社法(以下、省略する)795条1項)を取締役が招集(296条1項)するのを阻止するため、取締役の違法行為の差止め(360条1項)を行うことが考えられる
2(1) まず、Z社はX社の株式を長年保有していることから、「6ヶ月前から、引き続き株式を保有する株主」にあたる。
(2)次に、「法令に違反する行為をするおそれ」があるか検討する。
「法令」とは、会社を名宛人とする法令も含む。なぜなら、会社の業務執行は取締役に依存しており、取締役は会社にとって重要な地位を占めているため、取締役には会社を名宛人とする法令を遵守する義務を負うため、「法令」には会社を名宛人とする法令も含むべきだからである。
独禁法は名宛人とする法令であるが「法令」に含まれる。取締役は独禁法15条1項1号に違反する合併を行おうとすることは「法令に違反する行為をするおそれ」がある。
(3)続いて、「回復することができない損害」(360条1項、3項)があるか検討する。
独禁法違反により、課徴金等の制裁を会社が受けることになり、会社に対する社会的信用を失うことにつながる。これは、金銭によっても回復することができず、「回復することができない損害」(360条1項、3項)があるといえる。
3 よって、合併契約の締結や当該合併契約の承認を目的とする株主総会(会社法(以下、省略する)795条1項)を取締役が招集(296条1項)するのを阻止するため、取締役の違法行為の差止め(360条1項)を行うことができる。
第2 設問5
1 ①について
(1) まず、議決権行使書面を提出して行使された議決権について検討する。賛成と記載された数が5000個である。反対と記載されていた数は2000個である。
会社法施行規則66条1項2号により賛否の記載がない2万9000個は従前の議決権行使書面に記載された通り、賛成であるとみなされる。
(2) 次に、Z者に委任状を交付した議決権について検討する。
反対と委任状に記載された議決権2000個はZ社が反対の意思表示をしたとおり反対となる。
また、賛否の記載のがない1万個については白紙委任がZ社になされており、Z社は決議について反対の立場であることからすれば、反対の意思が表明されているといえる。そのため、Z社が反対の意思表示をしたとおり反対となる。
(3) 最後に賛成と委任状に記載された議決権であるが、Z社はこの議決権も含めて反対の議決権行使をしているため、賛成と委任状に記載された議決権の取扱いが問題になる。
議決権行使は株主の意思を反映させる手段であり、株主の意思が直接に表明されている時点を重視すべきである。
委任状によってしたZ社の議決権行使は間接的に株主の意思を表明したものにすぎず、直接株主の意思が表明されているのは委任状に記載されたものであるといえる。
賛成と委任状に記載されている以上、株主の意思は賛成の意思表示であり、これと矛盾するZ社の反対の議決権行使は、無効である。
よって、賛成と委任状に記載された議決権50個は無効と取り扱われる。
以上により、賛成の数は4万個であり、反対の数は2万個である
2 ②について
(1)議決権行使書面と委任状の両方に賛否を記載しなかったFの議決権はどのように取り扱われるか。議決権行使書面に賛否を記載しなかった場合は賛成になり、委任状に賛否を記載しなかった場合は反対と扱われるため、どちらに取り扱われるか問題になる。
(2) 議決権行使は株主の意思を反映させる手段であり、株主の意思が直接に表明されている時点を重視すべきである。
委任状によってしたZ社の議決権行使は間接的に株主の意思を表明するものであり、儀権行使書面は直接に株主の意思を表明するものであるから、議決行使書面の法を優先して取り扱うべきである。
よって、議決権行使書面が優先されることによりFの議決権100個は賛成と取り扱われることになる。
以上によれば、賛成は4万個であり、反対が1万9900個である。
第3 設問6
1 合併の効力が発生する前
(1)まず、Z社が合併の実現を阻止するためには、株主総会決議取消の訴え(831条)を提起することが考えられる。
EはZ社の動議や抗議を無視していることから、不当に決議を賛成のものとしようと誘導しているから、「決議の方法」に「著しく不公正」(831条1項1号)なものといえる。
よって、Z社が合併の実現を阻止するために、株主総会決議取消の訴え(831条)を提起することができる。
(2)次に、Z社が合併の実現を阻止するために株主総会無効確認の訴え(831条1項1号)を提起することが考えられる。
決議の内容は合併が独禁法15条1項1号に違反するものである。本件株主総会は「決議の内容に法令に違反」するといえる。
よって、Z社が合併の実現を阻止するために株主総会無効確認の訴え(831条1項1号)を提起することができる。
2 合併の効力が発生した後
合併の効力が発生した後は、合併無効確認の訴え(828条1項7号)を提起することが考られる。
合併の無効原因は明文はないが、法的安定性の観点から、軽微な違法を無効とすると法的安定性を害するため、重大な違法に限るべきである。よって、合併の無効原因は重大な違法に限られる。
まず、合併比率の不公正は無効原因になるか
合併比率について不公正があっても合併契約については当事者に交渉能力に差があり、比率に不公正が生じるのは当然であるし、株主にとっても株主買取請求権(758条)がある以上不利益といえない。
よって、合併比率の不公正は重大な違法といえず、無効原因とはいえない。
次に、合併承認決議の瑕疵は無効原因になるか
本件合併の承認決議には取消事由、無効事由があり瑕疵がある。合併承認決議は合併をするために不可欠な前提をなすものである。そのため、合併に重大な違法があるといえる。
よって、合併に無効原因があるといえる。
設問5と設問6が連動して、決議の数で無効原因が決まったり、決議日と効力発生日の関係とか書いていない・・・
解説読んで勉強しよう
1 合併契約の締結や当該合併契約の承認を目的とする株主総会(会社法(以下、省略する)795条1項)を取締役が招集(296条1項)するのを阻止するため、取締役の違法行為の差止め(360条1項)を行うことが考えられる
2(1) まず、Z社はX社の株式を長年保有していることから、「6ヶ月前から、引き続き株式を保有する株主」にあたる。
(2)次に、「法令に違反する行為をするおそれ」があるか検討する。
「法令」とは、会社を名宛人とする法令も含む。なぜなら、会社の業務執行は取締役に依存しており、取締役は会社にとって重要な地位を占めているため、取締役には会社を名宛人とする法令を遵守する義務を負うため、「法令」には会社を名宛人とする法令も含むべきだからである。
独禁法は名宛人とする法令であるが「法令」に含まれる。取締役は独禁法15条1項1号に違反する合併を行おうとすることは「法令に違反する行為をするおそれ」がある。
(3)続いて、「回復することができない損害」(360条1項、3項)があるか検討する。
独禁法違反により、課徴金等の制裁を会社が受けることになり、会社に対する社会的信用を失うことにつながる。これは、金銭によっても回復することができず、「回復することができない損害」(360条1項、3項)があるといえる。
3 よって、合併契約の締結や当該合併契約の承認を目的とする株主総会(会社法(以下、省略する)795条1項)を取締役が招集(296条1項)するのを阻止するため、取締役の違法行為の差止め(360条1項)を行うことができる。
第2 設問5
1 ①について
(1) まず、議決権行使書面を提出して行使された議決権について検討する。賛成と記載された数が5000個である。反対と記載されていた数は2000個である。
会社法施行規則66条1項2号により賛否の記載がない2万9000個は従前の議決権行使書面に記載された通り、賛成であるとみなされる。
(2) 次に、Z者に委任状を交付した議決権について検討する。
反対と委任状に記載された議決権2000個はZ社が反対の意思表示をしたとおり反対となる。
また、賛否の記載のがない1万個については白紙委任がZ社になされており、Z社は決議について反対の立場であることからすれば、反対の意思が表明されているといえる。そのため、Z社が反対の意思表示をしたとおり反対となる。
(3) 最後に賛成と委任状に記載された議決権であるが、Z社はこの議決権も含めて反対の議決権行使をしているため、賛成と委任状に記載された議決権の取扱いが問題になる。
議決権行使は株主の意思を反映させる手段であり、株主の意思が直接に表明されている時点を重視すべきである。
委任状によってしたZ社の議決権行使は間接的に株主の意思を表明したものにすぎず、直接株主の意思が表明されているのは委任状に記載されたものであるといえる。
賛成と委任状に記載されている以上、株主の意思は賛成の意思表示であり、これと矛盾するZ社の反対の議決権行使は、無効である。
よって、賛成と委任状に記載された議決権50個は無効と取り扱われる。
以上により、賛成の数は4万個であり、反対の数は2万個である
2 ②について
(1)議決権行使書面と委任状の両方に賛否を記載しなかったFの議決権はどのように取り扱われるか。議決権行使書面に賛否を記載しなかった場合は賛成になり、委任状に賛否を記載しなかった場合は反対と扱われるため、どちらに取り扱われるか問題になる。
(2) 議決権行使は株主の意思を反映させる手段であり、株主の意思が直接に表明されている時点を重視すべきである。
委任状によってしたZ社の議決権行使は間接的に株主の意思を表明するものであり、儀権行使書面は直接に株主の意思を表明するものであるから、議決行使書面の法を優先して取り扱うべきである。
よって、議決権行使書面が優先されることによりFの議決権100個は賛成と取り扱われることになる。
以上によれば、賛成は4万個であり、反対が1万9900個である。
第3 設問6
1 合併の効力が発生する前
(1)まず、Z社が合併の実現を阻止するためには、株主総会決議取消の訴え(831条)を提起することが考えられる。
EはZ社の動議や抗議を無視していることから、不当に決議を賛成のものとしようと誘導しているから、「決議の方法」に「著しく不公正」(831条1項1号)なものといえる。
よって、Z社が合併の実現を阻止するために、株主総会決議取消の訴え(831条)を提起することができる。
(2)次に、Z社が合併の実現を阻止するために株主総会無効確認の訴え(831条1項1号)を提起することが考えられる。
決議の内容は合併が独禁法15条1項1号に違反するものである。本件株主総会は「決議の内容に法令に違反」するといえる。
よって、Z社が合併の実現を阻止するために株主総会無効確認の訴え(831条1項1号)を提起することができる。
2 合併の効力が発生した後
合併の効力が発生した後は、合併無効確認の訴え(828条1項7号)を提起することが考られる。
合併の無効原因は明文はないが、法的安定性の観点から、軽微な違法を無効とすると法的安定性を害するため、重大な違法に限るべきである。よって、合併の無効原因は重大な違法に限られる。
まず、合併比率の不公正は無効原因になるか
合併比率について不公正があっても合併契約については当事者に交渉能力に差があり、比率に不公正が生じるのは当然であるし、株主にとっても株主買取請求権(758条)がある以上不利益といえない。
よって、合併比率の不公正は重大な違法といえず、無効原因とはいえない。
次に、合併承認決議の瑕疵は無効原因になるか
本件合併の承認決議には取消事由、無効事由があり瑕疵がある。合併承認決議は合併をするために不可欠な前提をなすものである。そのため、合併に重大な違法があるといえる。
よって、合併に無効原因があるといえる。
設問5と設問6が連動して、決議の数で無効原因が決まったり、決議日と効力発生日の関係とか書いていない・・・
解説読んで勉強しよう