貸倒損失の計上時期の論証
2013年8月23日 《論証》租税法○貸倒損失の計上時期(H20、H22)
損失(法22条3項3号)の計上時期の問題である。
・興銀事件
金銭債権の貸倒損失を「当該事業年度の損失」として、損金に算入するには、当該金銭債権の全額が回収不能であることが必要である。
∵恣意的な評価損の損金算入により課税所得金額の圧縮を図ることを防止する観点から、債権の評価損については原則として損金算入が否定されている(法33条1項)。したがって、貸倒損失と債権の評価損の損金不算入の調整を図るべきだからである。
そして、回収不能かは客観的に判断され、債務者の資産状況、支払い能力等の債務者側の事情のみならず債権回収に必要な労力債権額と取り立て費用との比較考量、債権回収を強行することによって、生ずる他の債権者とのあつれき等に経営的損失等といった債権者側の事情、経済的環境なども踏まえ社会通念に従って総合的に判断される。
☆債権者側の事情のあてはめPOINT☆
債権者側の事情としては信義則上やむをえない事情が必要である。
☆補足☆部分貸倒の意味
部分貸倒とは、金銭債権の無価値化が一部にとどまることをいう(租税法演習ノート21第二版p232)
〈短い論証〉
債権の一部が無価値となったかどうかの判断をするのは税務執行上困難であるから、部分貸倒を認めることができず全額が回収不能であることを要する。
そして、貸倒の評価には恣意的な評価が介入し納税者間の公平を害する恐れがあるので、納税者間の公平を害してもなお救済の必要が高いといえるような事情として債権者側の事情として信義則上やむをえない事情が要求される。
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