《新司》平成21年 商法
2013年9月19日 新司過去問《商法》第1 設問4
1 合併契約の締結や当該合併契約の承認を目的とする株主総会(会社法(以下、省略する)795条1項)を取締役が招集(296条1項)するのを阻止するため、取締役の違法行為の差止め(360条1項)を行うことが考えられる
2(1) まず、Z社はX社の株式を長年保有していることから、「6ヶ月前から、引き続き株式を保有する株主」にあたる。
(2)次に、「法令に違反する行為をするおそれ」があるか検討する。
「法令」とは、会社を名宛人とする法令も含む。なぜなら、会社の業務執行は取締役に依存しており、取締役は会社にとって重要な地位を占めているため、取締役には会社を名宛人とする法令を遵守する義務を負うため、「法令」には会社を名宛人とする法令も含むべきだからである。
独禁法は名宛人とする法令であるが「法令」に含まれる。取締役は独禁法15条1項1号に違反する合併を行おうとすることは「法令に違反する行為をするおそれ」がある。
(3)続いて、「回復することができない損害」(360条1項、3項)があるか検討する。
独禁法違反により、課徴金等の制裁を会社が受けることになり、会社に対する社会的信用を失うことにつながる。これは、金銭によっても回復することができず、「回復することができない損害」(360条1項、3項)があるといえる。
3 よって、合併契約の締結や当該合併契約の承認を目的とする株主総会(会社法(以下、省略する)795条1項)を取締役が招集(296条1項)するのを阻止するため、取締役の違法行為の差止め(360条1項)を行うことができる。
第2 設問5
1 ①について
(1) まず、議決権行使書面を提出して行使された議決権について検討する。賛成と記載された数が5000個である。反対と記載されていた数は2000個である。
会社法施行規則66条1項2号により賛否の記載がない2万9000個は従前の議決権行使書面に記載された通り、賛成であるとみなされる。
(2) 次に、Z者に委任状を交付した議決権について検討する。
反対と委任状に記載された議決権2000個はZ社が反対の意思表示をしたとおり反対となる。
また、賛否の記載のがない1万個については白紙委任がZ社になされており、Z社は決議について反対の立場であることからすれば、反対の意思が表明されているといえる。そのため、Z社が反対の意思表示をしたとおり反対となる。
(3) 最後に賛成と委任状に記載された議決権であるが、Z社はこの議決権も含めて反対の議決権行使をしているため、賛成と委任状に記載された議決権の取扱いが問題になる。
議決権行使は株主の意思を反映させる手段であり、株主の意思が直接に表明されている時点を重視すべきである。
委任状によってしたZ社の議決権行使は間接的に株主の意思を表明したものにすぎず、直接株主の意思が表明されているのは委任状に記載されたものであるといえる。
賛成と委任状に記載されている以上、株主の意思は賛成の意思表示であり、これと矛盾するZ社の反対の議決権行使は、無効である。
よって、賛成と委任状に記載された議決権50個は無効と取り扱われる。
以上により、賛成の数は4万個であり、反対の数は2万個である
2 ②について
(1)議決権行使書面と委任状の両方に賛否を記載しなかったFの議決権はどのように取り扱われるか。議決権行使書面に賛否を記載しなかった場合は賛成になり、委任状に賛否を記載しなかった場合は反対と扱われるため、どちらに取り扱われるか問題になる。
(2) 議決権行使は株主の意思を反映させる手段であり、株主の意思が直接に表明されている時点を重視すべきである。
委任状によってしたZ社の議決権行使は間接的に株主の意思を表明するものであり、儀権行使書面は直接に株主の意思を表明するものであるから、議決行使書面の法を優先して取り扱うべきである。
よって、議決権行使書面が優先されることによりFの議決権100個は賛成と取り扱われることになる。
以上によれば、賛成は4万個であり、反対が1万9900個である。
第3 設問6
1 合併の効力が発生する前
(1)まず、Z社が合併の実現を阻止するためには、株主総会決議取消の訴え(831条)を提起することが考えられる。
EはZ社の動議や抗議を無視していることから、不当に決議を賛成のものとしようと誘導しているから、「決議の方法」に「著しく不公正」(831条1項1号)なものといえる。
よって、Z社が合併の実現を阻止するために、株主総会決議取消の訴え(831条)を提起することができる。
(2)次に、Z社が合併の実現を阻止するために株主総会無効確認の訴え(831条1項1号)を提起することが考えられる。
決議の内容は合併が独禁法15条1項1号に違反するものである。本件株主総会は「決議の内容に法令に違反」するといえる。
よって、Z社が合併の実現を阻止するために株主総会無効確認の訴え(831条1項1号)を提起することができる。
2 合併の効力が発生した後
合併の効力が発生した後は、合併無効確認の訴え(828条1項7号)を提起することが考られる。
合併の無効原因は明文はないが、法的安定性の観点から、軽微な違法を無効とすると法的安定性を害するため、重大な違法に限るべきである。よって、合併の無効原因は重大な違法に限られる。
まず、合併比率の不公正は無効原因になるか
合併比率について不公正があっても合併契約については当事者に交渉能力に差があり、比率に不公正が生じるのは当然であるし、株主にとっても株主買取請求権(758条)がある以上不利益といえない。
よって、合併比率の不公正は重大な違法といえず、無効原因とはいえない。
次に、合併承認決議の瑕疵は無効原因になるか
本件合併の承認決議には取消事由、無効事由があり瑕疵がある。合併承認決議は合併をするために不可欠な前提をなすものである。そのため、合併に重大な違法があるといえる。
よって、合併に無効原因があるといえる。
設問5と設問6が連動して、決議の数で無効原因が決まったり、決議日と効力発生日の関係とか書いていない・・・
解説読んで勉強しよう
1 合併契約の締結や当該合併契約の承認を目的とする株主総会(会社法(以下、省略する)795条1項)を取締役が招集(296条1項)するのを阻止するため、取締役の違法行為の差止め(360条1項)を行うことが考えられる
2(1) まず、Z社はX社の株式を長年保有していることから、「6ヶ月前から、引き続き株式を保有する株主」にあたる。
(2)次に、「法令に違反する行為をするおそれ」があるか検討する。
「法令」とは、会社を名宛人とする法令も含む。なぜなら、会社の業務執行は取締役に依存しており、取締役は会社にとって重要な地位を占めているため、取締役には会社を名宛人とする法令を遵守する義務を負うため、「法令」には会社を名宛人とする法令も含むべきだからである。
独禁法は名宛人とする法令であるが「法令」に含まれる。取締役は独禁法15条1項1号に違反する合併を行おうとすることは「法令に違反する行為をするおそれ」がある。
(3)続いて、「回復することができない損害」(360条1項、3項)があるか検討する。
独禁法違反により、課徴金等の制裁を会社が受けることになり、会社に対する社会的信用を失うことにつながる。これは、金銭によっても回復することができず、「回復することができない損害」(360条1項、3項)があるといえる。
3 よって、合併契約の締結や当該合併契約の承認を目的とする株主総会(会社法(以下、省略する)795条1項)を取締役が招集(296条1項)するのを阻止するため、取締役の違法行為の差止め(360条1項)を行うことができる。
第2 設問5
1 ①について
(1) まず、議決権行使書面を提出して行使された議決権について検討する。賛成と記載された数が5000個である。反対と記載されていた数は2000個である。
会社法施行規則66条1項2号により賛否の記載がない2万9000個は従前の議決権行使書面に記載された通り、賛成であるとみなされる。
(2) 次に、Z者に委任状を交付した議決権について検討する。
反対と委任状に記載された議決権2000個はZ社が反対の意思表示をしたとおり反対となる。
また、賛否の記載のがない1万個については白紙委任がZ社になされており、Z社は決議について反対の立場であることからすれば、反対の意思が表明されているといえる。そのため、Z社が反対の意思表示をしたとおり反対となる。
(3) 最後に賛成と委任状に記載された議決権であるが、Z社はこの議決権も含めて反対の議決権行使をしているため、賛成と委任状に記載された議決権の取扱いが問題になる。
議決権行使は株主の意思を反映させる手段であり、株主の意思が直接に表明されている時点を重視すべきである。
委任状によってしたZ社の議決権行使は間接的に株主の意思を表明したものにすぎず、直接株主の意思が表明されているのは委任状に記載されたものであるといえる。
賛成と委任状に記載されている以上、株主の意思は賛成の意思表示であり、これと矛盾するZ社の反対の議決権行使は、無効である。
よって、賛成と委任状に記載された議決権50個は無効と取り扱われる。
以上により、賛成の数は4万個であり、反対の数は2万個である
2 ②について
(1)議決権行使書面と委任状の両方に賛否を記載しなかったFの議決権はどのように取り扱われるか。議決権行使書面に賛否を記載しなかった場合は賛成になり、委任状に賛否を記載しなかった場合は反対と扱われるため、どちらに取り扱われるか問題になる。
(2) 議決権行使は株主の意思を反映させる手段であり、株主の意思が直接に表明されている時点を重視すべきである。
委任状によってしたZ社の議決権行使は間接的に株主の意思を表明するものであり、儀権行使書面は直接に株主の意思を表明するものであるから、議決行使書面の法を優先して取り扱うべきである。
よって、議決権行使書面が優先されることによりFの議決権100個は賛成と取り扱われることになる。
以上によれば、賛成は4万個であり、反対が1万9900個である。
第3 設問6
1 合併の効力が発生する前
(1)まず、Z社が合併の実現を阻止するためには、株主総会決議取消の訴え(831条)を提起することが考えられる。
EはZ社の動議や抗議を無視していることから、不当に決議を賛成のものとしようと誘導しているから、「決議の方法」に「著しく不公正」(831条1項1号)なものといえる。
よって、Z社が合併の実現を阻止するために、株主総会決議取消の訴え(831条)を提起することができる。
(2)次に、Z社が合併の実現を阻止するために株主総会無効確認の訴え(831条1項1号)を提起することが考えられる。
決議の内容は合併が独禁法15条1項1号に違反するものである。本件株主総会は「決議の内容に法令に違反」するといえる。
よって、Z社が合併の実現を阻止するために株主総会無効確認の訴え(831条1項1号)を提起することができる。
2 合併の効力が発生した後
合併の効力が発生した後は、合併無効確認の訴え(828条1項7号)を提起することが考られる。
合併の無効原因は明文はないが、法的安定性の観点から、軽微な違法を無効とすると法的安定性を害するため、重大な違法に限るべきである。よって、合併の無効原因は重大な違法に限られる。
まず、合併比率の不公正は無効原因になるか
合併比率について不公正があっても合併契約については当事者に交渉能力に差があり、比率に不公正が生じるのは当然であるし、株主にとっても株主買取請求権(758条)がある以上不利益といえない。
よって、合併比率の不公正は重大な違法といえず、無効原因とはいえない。
次に、合併承認決議の瑕疵は無効原因になるか
本件合併の承認決議には取消事由、無効事由があり瑕疵がある。合併承認決議は合併をするために不可欠な前提をなすものである。そのため、合併に重大な違法があるといえる。
よって、合併に無効原因があるといえる。
設問5と設問6が連動して、決議の数で無効原因が決まったり、決議日と効力発生日の関係とか書いていない・・・
解説読んで勉強しよう
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