《新司》平成23年 商法
2013年9月26日 新司過去問《商法》第1 ①について
1 本件自己株式取得の効力
(1) 本件自己株式取得は無効となるか。自己株式の取得が無効となるためには、軽微な違法まで無効とすると取引の安全を害するために無効原因は重大な違法に限られる。
(2) まず、甲社は特定の株主であるBから自己株式を取得しようとしている。甲社は公開会社であるから相続人であるBには162条は適用されない(162条但書1号)。そのため、定時株主総会においてB以外の株主も株式の買取請求を甲社に対してできる旨を通知しなければならない(160条2項、3項)。それにもかかわらず、甲社はB以外の甲社株主に甲社株主に対し第1号議案の「取得する相手方」の株主に自己をも加えたもの株主総会の議案とすることを請求できることを通知していない。
そのため、甲社は本件自己株式取得において160条3項に違反する。
さらに、「特定の株主」(160条1項)であるBは議決権行使をすることができない(160条4項)。それにかかわらず、第1号議案につきBが議決権を行使しているのは、160条4項違反である。
160条3項は株主平等原則(109条1項)を反映し株主間の公平を図るための制度であるから、160条3項違反は重大な違反といえる。また、160条4項も会社の自己株式の取得につき株主間の公平を図るために議決権行使を制限するのであるから重大な違反であるといえる。
よって、本件自己株式取得は無効であるといえる。
(3) 次に、本件自己株取得(157条1項)は財源規制(161条1項3号)に反し無効でならないか。資料②からすれば、5億円を上限として自己株式を取得することができる。
そして、462条1項の規定する責任額が効力発生日の分配可能額を超過する額でなく譲渡人が交付を受けた金銭等の帳簿価格全額であるのは取得が無効であることを前提とした処理である。自己株式取得(157条1項)は財源規制(161条1項3号)に反し無効である。
2 甲社とBとの法律関係
(1)まず、本件自己株式取得について甲社から財産規制に反して金銭の交付を受けたBは、交付された金銭である25億円を甲社に対して支払う義務を負う(462条1項柱書き)
(2)次に、甲社はBに対して本件自己株式取得は無効であり法律上の原因がないから不当利得返還請求(民法703条1項)ができるか問題になる。
Bは同時履行の抗弁権(民法533条)があるため法律上の原因があるといえそうであるが、462条1項が同時履行の抗弁権を排除していると解することができるため、法律上の原因がないといえる。よって、Bは甲社に仮に当該株式が返還されたら、その時点でBが取得できた価値を返還する必要があることから、返還時の株価である800円に基づき20億円の返還債務を負う。
第2 ②について
1 本件自己株式処分は無効であるか。
本件自己株式処分が無効であるためには、明文はないが取引の安全の観点から重大な違反に限るべきである。
2 定時株主総会に取消事由(834条)があり、無効ではないか。
まず、834条1項1号の取消事由に該当しないか。
定時株主総会において株主Dは質問をしており、Cには説明義務(314条)が生じる。それにもかかわらず、Cは「企業秘密」であると答え特に免責事由(314条但書、会社法施行規則71条)に該当しないのに説明を拒絶している。
そのため、314条違反という決議の方法の法令違反がある。
よって、、834条1項1号の取消事由に該当する。
次に、834条1項3号の取消事由に該当しないか。
「特別の利害関係を有する者」(834条1項3号)とは、議案の成立について多数の株主と共通しない特殊な利益を有し、又は、不利益を免れる者をいう。
Bは本件自己株式取得について多数の株主が反対していることから、多数の株主と利益が共通せず、本件自己株式取得につき市場価格25%を上回る価格で株式の買取を受けられるという特殊な利益をえている。
よって、Bは「特別な利害関係を有する者」といえる。
そして、Bが賛成したためかろうじて賛成が得られたのであるから、Bが賛成しなかったら賛成は得られなかったし、議案についても特別の利害を有する者であるB以外は株式を買取もされないのであるから著しく不利益を受けるといえ「議決権を行使したことによって、著しく不当な決議」がなされたといえる。
よって、834条1項3号の取消事由に該当する。
したがって、定時株主総会に取消事由(831条1項1号、3号)がある。
では、定時株主総会に取消事由があることが自己株式処分の無効事由になるか。
定時株主総会は会社の内部的な意思決定であり、内部的な意思決定に瑕疵があっても外部からは認識することが困難であるため、取引の安全が保護する必要が有り、軽微な違法にとどまる。よって、定時株主総会について取消事由があることは重大な違法といえず、自己株式処分の無効事由にならない。
3 本件自己株式取得が無効であることは本件自己株式処分無効原因にならないか。
本件自己株式取得は財源規制に違反するものであるが、財源規制違反は会社債権者を害するものであり、会社債権者保護は自己株式を無効とすることで達成できる。そして、本件自己株式処分を無効とすると乙者が売却した50株にも影響が生じ取引の安全を害する。そのため、重大な違法にはあたらず、本件自己株式取得が無効であることは本件自己株式処分無効原因にならない。
4本件自己株式処分は無効にならず、有効となる。
第3 ③について
1本件自己株式取得は分配可能額を超えるため、Cは業務執行者としてBが甲社から交付を受けた25億円ついて甲社に対して支払義務(462条1項柱書き)を負いそうである。
分配可能額を下回ったのは西日本事業部で架空売上げがあったためで、この手口は会計監査人ですら見抜けない巧妙なものであった。そして、甲社の内部統制システムには問題はなく、C自身も架空売上げを見抜けなかったことに過失はなかったのであるから、Cは「職務を行うについて注意を怠らなかった」といえる。
したがって、Cは「職務を行うについて注意を怠らなかった」といえる。
したがって、Cは免責され支払い義務を負わない。
2 Cは、平成23年3月31日時点で30億円の欠損が生じていることから、欠損責任を填補責任(465条1項3号)を負いそうである。。
架空売上に基づいて作成された貸借対照表である資料②から分配可能額は35億円であり、25億円の自己株式取得をしても欠損が期末に生じるとは予想し難いため、Cは「注意を怠ならなかった」(465条1項但書)といえる。
よって、Cは免責され填補責任を負わない。
3 本件自己株式取得につき甲社につき5億円の損害が生じている。Cには161条2項3項違反と、161条4項違反の者であるBに議決権を行使させた議事運営(315条)違反という法定遵守義務違反が有り任務懈怠(423条1項)が認められる。
そして、Cの任務懈怠と甲社の損害には因果関係があるため、Cは甲社に対して損害賠償責任を負う(423条1項)。
4 本件自己株式処分は株式の価格を時価から20%割り引いているため、甲社には、4億円のうべかりし利益があるといえ、甲社に4億円の損害が生じている。
Cには、第2号議案は乙社の賛成により「かろうじて」可決されており、Cが説明義務を履行していれば、第2号議案が可決されなかった可能性があり、説明義務違反(314条)という法令遵守義務違反が有り任務懈怠が認められる。
そして、損害と任務懈怠との間に因果関係が認められる。
よって、甲社に対してCは4億円に損害賠償責任を負う。
正直解説読んで書き直しました。
本番ではこれは無理。
知識的には自己株式の取得の手続きを補充して、書き方的なものは短く書く方法を少し練習する。
1 本件自己株式取得の効力
(1) 本件自己株式取得は無効となるか。自己株式の取得が無効となるためには、軽微な違法まで無効とすると取引の安全を害するために無効原因は重大な違法に限られる。
(2) まず、甲社は特定の株主であるBから自己株式を取得しようとしている。甲社は公開会社であるから相続人であるBには162条は適用されない(162条但書1号)。そのため、定時株主総会においてB以外の株主も株式の買取請求を甲社に対してできる旨を通知しなければならない(160条2項、3項)。それにもかかわらず、甲社はB以外の甲社株主に甲社株主に対し第1号議案の「取得する相手方」の株主に自己をも加えたもの株主総会の議案とすることを請求できることを通知していない。
そのため、甲社は本件自己株式取得において160条3項に違反する。
さらに、「特定の株主」(160条1項)であるBは議決権行使をすることができない(160条4項)。それにかかわらず、第1号議案につきBが議決権を行使しているのは、160条4項違反である。
160条3項は株主平等原則(109条1項)を反映し株主間の公平を図るための制度であるから、160条3項違反は重大な違反といえる。また、160条4項も会社の自己株式の取得につき株主間の公平を図るために議決権行使を制限するのであるから重大な違反であるといえる。
よって、本件自己株式取得は無効であるといえる。
(3) 次に、本件自己株取得(157条1項)は財源規制(161条1項3号)に反し無効でならないか。資料②からすれば、5億円を上限として自己株式を取得することができる。
そして、462条1項の規定する責任額が効力発生日の分配可能額を超過する額でなく譲渡人が交付を受けた金銭等の帳簿価格全額であるのは取得が無効であることを前提とした処理である。自己株式取得(157条1項)は財源規制(161条1項3号)に反し無効である。
2 甲社とBとの法律関係
(1)まず、本件自己株式取得について甲社から財産規制に反して金銭の交付を受けたBは、交付された金銭である25億円を甲社に対して支払う義務を負う(462条1項柱書き)
(2)次に、甲社はBに対して本件自己株式取得は無効であり法律上の原因がないから不当利得返還請求(民法703条1項)ができるか問題になる。
Bは同時履行の抗弁権(民法533条)があるため法律上の原因があるといえそうであるが、462条1項が同時履行の抗弁権を排除していると解することができるため、法律上の原因がないといえる。よって、Bは甲社に仮に当該株式が返還されたら、その時点でBが取得できた価値を返還する必要があることから、返還時の株価である800円に基づき20億円の返還債務を負う。
第2 ②について
1 本件自己株式処分は無効であるか。
本件自己株式処分が無効であるためには、明文はないが取引の安全の観点から重大な違反に限るべきである。
2 定時株主総会に取消事由(834条)があり、無効ではないか。
まず、834条1項1号の取消事由に該当しないか。
定時株主総会において株主Dは質問をしており、Cには説明義務(314条)が生じる。それにもかかわらず、Cは「企業秘密」であると答え特に免責事由(314条但書、会社法施行規則71条)に該当しないのに説明を拒絶している。
そのため、314条違反という決議の方法の法令違反がある。
よって、、834条1項1号の取消事由に該当する。
次に、834条1項3号の取消事由に該当しないか。
「特別の利害関係を有する者」(834条1項3号)とは、議案の成立について多数の株主と共通しない特殊な利益を有し、又は、不利益を免れる者をいう。
Bは本件自己株式取得について多数の株主が反対していることから、多数の株主と利益が共通せず、本件自己株式取得につき市場価格25%を上回る価格で株式の買取を受けられるという特殊な利益をえている。
よって、Bは「特別な利害関係を有する者」といえる。
そして、Bが賛成したためかろうじて賛成が得られたのであるから、Bが賛成しなかったら賛成は得られなかったし、議案についても特別の利害を有する者であるB以外は株式を買取もされないのであるから著しく不利益を受けるといえ「議決権を行使したことによって、著しく不当な決議」がなされたといえる。
よって、834条1項3号の取消事由に該当する。
したがって、定時株主総会に取消事由(831条1項1号、3号)がある。
では、定時株主総会に取消事由があることが自己株式処分の無効事由になるか。
定時株主総会は会社の内部的な意思決定であり、内部的な意思決定に瑕疵があっても外部からは認識することが困難であるため、取引の安全が保護する必要が有り、軽微な違法にとどまる。よって、定時株主総会について取消事由があることは重大な違法といえず、自己株式処分の無効事由にならない。
3 本件自己株式取得が無効であることは本件自己株式処分無効原因にならないか。
本件自己株式取得は財源規制に違反するものであるが、財源規制違反は会社債権者を害するものであり、会社債権者保護は自己株式を無効とすることで達成できる。そして、本件自己株式処分を無効とすると乙者が売却した50株にも影響が生じ取引の安全を害する。そのため、重大な違法にはあたらず、本件自己株式取得が無効であることは本件自己株式処分無効原因にならない。
4本件自己株式処分は無効にならず、有効となる。
第3 ③について
1本件自己株式取得は分配可能額を超えるため、Cは業務執行者としてBが甲社から交付を受けた25億円ついて甲社に対して支払義務(462条1項柱書き)を負いそうである。
分配可能額を下回ったのは西日本事業部で架空売上げがあったためで、この手口は会計監査人ですら見抜けない巧妙なものであった。そして、甲社の内部統制システムには問題はなく、C自身も架空売上げを見抜けなかったことに過失はなかったのであるから、Cは「職務を行うについて注意を怠らなかった」といえる。
したがって、Cは「職務を行うについて注意を怠らなかった」といえる。
したがって、Cは免責され支払い義務を負わない。
2 Cは、平成23年3月31日時点で30億円の欠損が生じていることから、欠損責任を填補責任(465条1項3号)を負いそうである。。
架空売上に基づいて作成された貸借対照表である資料②から分配可能額は35億円であり、25億円の自己株式取得をしても欠損が期末に生じるとは予想し難いため、Cは「注意を怠ならなかった」(465条1項但書)といえる。
よって、Cは免責され填補責任を負わない。
3 本件自己株式取得につき甲社につき5億円の損害が生じている。Cには161条2項3項違反と、161条4項違反の者であるBに議決権を行使させた議事運営(315条)違反という法定遵守義務違反が有り任務懈怠(423条1項)が認められる。
そして、Cの任務懈怠と甲社の損害には因果関係があるため、Cは甲社に対して損害賠償責任を負う(423条1項)。
4 本件自己株式処分は株式の価格を時価から20%割り引いているため、甲社には、4億円のうべかりし利益があるといえ、甲社に4億円の損害が生じている。
Cには、第2号議案は乙社の賛成により「かろうじて」可決されており、Cが説明義務を履行していれば、第2号議案が可決されなかった可能性があり、説明義務違反(314条)という法令遵守義務違反が有り任務懈怠が認められる。
そして、損害と任務懈怠との間に因果関係が認められる。
よって、甲社に対してCは4億円に損害賠償責任を負う。
正直解説読んで書き直しました。
本番ではこれは無理。
知識的には自己株式の取得の手続きを補充して、書き方的なものは短く書く方法を少し練習する。
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