第1 設問1
  1 法的手段
   ①勧告の取消訴訟(行政事件訴訟(以下、省略する)3条2項)と処分の続行による執行停止(25条2項)②勧告に従う義務のないことの地位を確認する実質的当事者訴訟(4条後段)③公表の差止め訴訟(3条7項、37条の4)と仮の差止め訴訟(37条の5第2項)が法的手段として考えられる。
  2 まず①の法的手段を検討する。
    勧告の取消訴訟が認められるには勧告が「処分」(3条2項)であることが必要である。
    「処分」とは公権力主体たる国または地方公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成し、または、その範囲を確定することが法律上認められているものをいう。
 勧告は都道府県知事が行うものである(法103条1項)。そのため、公権力主体たる地方公共団体が行う行為であるといえる。
 法97条2項3項の基準に適合しない場合には勧告できる(法103条1項)。
 勧告は行政指導であるため、強制力がないため国民の義務を形成するものでない。もっとも、勧告に従わないときは、公表(103条2項)、業務停止命令(103条3項)、開設許可取り消し(104条1項柱書)が行われる。これらは、勧告から期限が定められて行われるものではなく勧告から特に障害なく行われるものであるから、勧告の従わないと公表、業務停止命令、開設許可取り消しという不利益を被る。
とすれば、勧告に従う義務を課されているといえ直接国民の義務を形成している。
 よって、勧告が「処分」(3条2項)であることが認められる。そして、その他の取消訴訟の要件も満たす。
 では、処分の続行の執行停止は認められるか。
 「重大な損害」があるか。重大な損害が生ずるかは否かを判断するにあたっては、損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分の内容性質をも勘案するものとする。
 勧告書に書かれていたように公表がされ、市民からの信頼が失われる。信頼という社会的信用は一度失われると回復の困難の程度が大きい。そして、多くの利用者が本件施設を離れてしまうと経営難になるから、損害の性質及び程度は大きい。
 よって、公表には重大な損害が認められる。
 公表は勧告から期限が定められて行われるものではなく勧告から特に障害なく行われるものであるから、勧告が行われた今の時点で執行停止をしなければ不利益を被るといえ、「緊急の必要」がある。そして、「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれ」(25条4項)はなく、「本案について理由がないとみえる」(25条4項)ときでない。
 よって、処分の続行の執行停止は認められ、公表の阻止を行うことができる。
3 次に、②の法的手段を検討する
  勧告について処分性が認められる以上、実質的当事者訴訟を提起することはできないため、勧告に従う義務のないことを確認する実質的当事者を提起することはできない。
4 最後に③の法的手段を検討する。
  差止め訴訟が認めれるには、公表が処分であることが必要である。
  公表はB県知事がする(法103条2項)ものであり、公権力主体が行う行為である。公表は、情報提供行為であり事実行為である。もっとも、勧告に従わないと公表を受けることから、制裁的公表的性格を有するといえる。公表され内容に従う義務を課されるから、国民の義務を形成させている。
 よって、公表は「処分」といえる。
 もっとも、勧告に処分があると認められ、執行停止が認められる以上、「その損害を避けるため他に適用な方法がある」といえる。
 よって、差止め訴訟を行うことはできない。
5 各制度の比較
 実質的当事者は認めらない。差止め訴訟は認められず、また、差止めを認められたとしても、仮の差止めの要件は執行停止よりも厳格である。そのため、勧告の取消訴訟と処分の続行の執行停止が最も適切な訴訟手段である。
第2 設問2
  1 調査
(1) 実体違法
   知事は当然に実地指導を先行させる義務を負わない。しかし、他の施設では行政指導として実施指導が行われている。それにもかかわらず、本件施設に対していきなり罰則を前提とした間接強制調査を実地しており比例原則及び平等原則違反がある
(2) 手続違法
   B県職員が身分証を提示しなかった点は法102条が準用する法24条3項に違反し違法である。
  B県職員が帳簿書類等をダンボール箱に詰めて持ち帰った行為は「押収」にあたる。。これは法100条1項に規定されていないことを行うものであって違法である。
2 調査の違法が勧告に及ぼす影響
 調査に違法な点があっても、調査によって得られた結果自体に誤りがあるとは限られない。当然に勧告が違法となるわけではない。
 しかし、適正手続きの観点から、後行行為と密接に関連する先行行為の重大な瑕疵は、後行行為の違法性を基礎付ける。
 本件調査は、勧告の前提にあり、これに密接関連する先行行為である。
 そして、身分証の不呈示は、調査を受けた者が責任の所在を把握することができず、不服申し立ての機会を失うため、重大な違法であるといえる。
 よって、本件調査の違法は、後行行為たる韓国自体を違法とする影響を及ぼす。
3 勧告の違法
(1)実体違法
ア 「専ら当該介護老人保健施設の職務に従事する者」(法97条2項、省令2条4項)を計算にあたって考慮に入れる必要がある(省令2条3項)。週5日働いている看護師2名、介護職員5名は週5日も継続して働いているため、「専ら当該介護老人保健施設の職務に従事する者」といえる。しかし、勧告は前提となる事実について、一部の出勤簿を対象としていない上、人員の把握を誤ったものである。
 よって、事実誤認の違法がある。
イ 省令13条4項は「緊急やむを得ない場合」は身体拘束をすることができる。
 ベッドからの転倒防止を第1に考え、5時間に限って入所者家族の同意に下に1名のベッドに柵を設置している。これは入所者の生命身体を保護するために行われたものであり、緊急やむを得ないものであるといる。 
 そのため、省令13条4項の身体拘束には該当せず、事実誤認の違法がある。
(2)手続違法
ア 勧告は処分性が肯定されるものであり、勧告はB県知事が行うものであり不利益処分(行政手続法(以下、行手法と省略する)3条3項)となる。そのため、理由の提示(行手法14条1項)が必要である。理由の提示の記載は、理由の提示の趣旨が行政庁の判断の恣意を抑制し、不服申し立ての便宜を図ることにあるから、いかなる事実関係に基づきいなかる法規を適用したかをその記載自体から了知しうるものであることが必要である。
 勧告書には勧告の基礎となる事実は示されていなかったのあるから、いかなる事実関係に基づき勧告がなされてたかの記載自体から了知することができない。
 よって、理由提示の記載が不十分であり、行手法14条1項に反する。
イ 勧告は不利益処分であるため弁明の機会を付与する必要がある(行手法13条1項2号)調査以来、B県からは何の連絡もなく問い合わせに一切応じてこなかった状況の中で、いきなり勧告書が交付されている。そのため弁明の機会が付与されていないため、行手法13条1項2号違反がある。
以上

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