事例で考える会社法㉓
2013年10月2日 論文第1 設問(1)
1 Pは甲社と乙社の吸収分割について存続会社である乙社(834条7号)対して吸収分割無効確認の訴えを提起し吸収分割の無効主張することが考えられる。
まず、吸収合併の提訴権者には、合併について承認をしなかった債権者(828条2項9号)が含まれる。
本件では、Pはα年6月に地下水が汚染されて損害が生じているとして甲社に対して不法行為による損害賠償請求権を取得している。そのため、Pは甲社との関係では債権者である。もっとも、甲社は地下水の汚染されていることを知らず、また、客観的にも地下水の汚染が疑われる事情はなかった。そのため、Pに不法行為による損害が生じていることについて甲社には認識はなく、Pは知れている債権者ではない。とすれば、789条2項の格別の催告は不要であり、Pは債権者手続きにおいて異議を述べておらず、吸収合併を承認したものとみなされる(789条4項、799条4項)。
よって、合併について承認をしなかった債権者(828条2項9号)にはPは含まれず、吸収合併の提訴権者ではない。
したがって、Pは甲社と乙社の吸収分割について存続会社である乙社(834条7号)対して吸収分割無効確認の訴えを提起し吸収分割の無効主張することができない
2 Pは甲社に対して759条2項により不法行為に基づく損害賠償債務の履行を請求することが考えられる。
かかる、履行請求をするためには、789条2項の催告を受けなかったことが必要である。
789条2項の個別催告は、文言から、「知れている」不法行為債権者に対してのみすることで足りる。
本件では、甲社は地下水の汚染されていることを知らず、また、客観的にも地下水の汚染が疑われる事情はなかった。そのため、Pに不法行為による損害が生じていることについて甲社には認識はなく、Pは知れている債権者ではない。
よって、Pは甲社にとって知れている債権者ではなく、そもそも催告をする必要はない債権者であるから、789条2項の催告を受けなかったことの要件の前提を欠くといえる。
したがって、Pは甲社に対して759条2項により不法行為に基づく損害賠償債務の履行を請求することはできない。
もっとも、損害または加害者たる債務者をしらない不法行為債権者との関係では、そもそも免責的債務引受が生じないのであるから、これらの不法行為債権者は分割後は、会社分割の両当事会社に損害賠償を請求することができる。
第2 設問(2)
1 まず、Qは吸収分割無効の訴えを提起することが考えられるが、分割会社に残存する債権者債権者異議手続による保護の対象外であり(789条1項2号)、提訴権者にはならないた、Qは吸収分割無効の訴えを提起できない。
2 Qは乙社に対して吸収分割を対象として詐害行為取消権(民法424条)を行使することが考えられる。
まず、財産権を目的とする法律行為であるか
確かに、組織再編上の行為であるが、吸収分割が事業に関して有する権利の義務の全部または一部を承継させること法律行為であるとすると財産権を目的とする法律光であるといえる。
次に、Qは本件の分割契約前から、甲社に対して4000万円の貸金債権を有するといえ、詐害行為前に被保全債権が存在している。
では、詐害性が認められるか。詐害性は詐害行為と詐害意思を相対的に判断する。
会社分割後の甲会社の資産総額(帳簿価額)は3000万円、負債総額1億円である、会社分割後の甲社はのれん代を計上し、資産の評価換えをしても、実質的な債務超過状態であったといえ、甲社は債権者であるQを害する認識していたといえ詐害意思が認められ、甲社は会社分割後は実質的債務超過をしていることになるから、債務者の責任財産を減少させる法律行為である詐害行為が認められる。
よって、詐害性が認められる。また、乙社は分割契約の当時会社であるから、悪意である。
したがって、Qは吸収分割を対象として詐害行為取消権を行使することができる。
もっとも、個々の財産は移転した事業に組み込まれている可能性が高いので現物返還を求めると、事業運営に支障が生じる可能性があるから、価格賠償によることになる。
続いて、乙社が甲社の商号を実質的に引き継いでいると評価される場合には、Qは会社法22条1項の類推適用により、乙社に債務の弁済を請求することができる。
吸収分割は事業譲渡ではないが、会社法22条1項の趣旨は、事業主の交代を知らないか、あるいは知っていた時でも称号の続用がある場合、営業に含まれる自己の債務も引き受けられたものと考える債権者の信頼を保護するものである。
とすれば、吸収分割も事業譲渡もいずれも法律行為による事業の移転であり同条の趣旨が妥当するため、会社法22条1項を類推適用すべきである。
甲社はもともと鞄メーカーであり、鞄部門を有していた。そして、まだ鞄部門は再建の余地があるから吸収分割により乙社に鞄部門を移転している。とすれば、乙社は実質的に甲社の商号を実質的に引き継いでいるといえ、Qは会社法22条1項の類推適用により、乙社に債務の弁済を請求することができる。
最後に、Qとしては甲社がQからの債務の履行を免れるために吸収分割を行ったとして乙社に対して法人格否認の法理により甲社と乙社を同一視して、Qは4000万円の請求をすることができる。
法人格は団体の法律関係を単純化するための法技術であり、乱用してる場合には、権利濫用(民法1条3項)により法人格を否定する。
法人格を否定するためには、支配要件と目的要件を満たす必要がある。
本件では、別法人化には、鞄部門はまだ再建の余地があるため自力で立て直すことを目的とするために旧分割をしているのであり、違法な目的は存在しない。そのた、目的要件を満たさない。
よって、乙社の法人格は否定されず、乙者と甲社は同一視されず、Qは4000万円を請求できない。
1 Pは甲社と乙社の吸収分割について存続会社である乙社(834条7号)対して吸収分割無効確認の訴えを提起し吸収分割の無効主張することが考えられる。
まず、吸収合併の提訴権者には、合併について承認をしなかった債権者(828条2項9号)が含まれる。
本件では、Pはα年6月に地下水が汚染されて損害が生じているとして甲社に対して不法行為による損害賠償請求権を取得している。そのため、Pは甲社との関係では債権者である。もっとも、甲社は地下水の汚染されていることを知らず、また、客観的にも地下水の汚染が疑われる事情はなかった。そのため、Pに不法行為による損害が生じていることについて甲社には認識はなく、Pは知れている債権者ではない。とすれば、789条2項の格別の催告は不要であり、Pは債権者手続きにおいて異議を述べておらず、吸収合併を承認したものとみなされる(789条4項、799条4項)。
よって、合併について承認をしなかった債権者(828条2項9号)にはPは含まれず、吸収合併の提訴権者ではない。
したがって、Pは甲社と乙社の吸収分割について存続会社である乙社(834条7号)対して吸収分割無効確認の訴えを提起し吸収分割の無効主張することができない
2 Pは甲社に対して759条2項により不法行為に基づく損害賠償債務の履行を請求することが考えられる。
かかる、履行請求をするためには、789条2項の催告を受けなかったことが必要である。
789条2項の個別催告は、文言から、「知れている」不法行為債権者に対してのみすることで足りる。
本件では、甲社は地下水の汚染されていることを知らず、また、客観的にも地下水の汚染が疑われる事情はなかった。そのため、Pに不法行為による損害が生じていることについて甲社には認識はなく、Pは知れている債権者ではない。
よって、Pは甲社にとって知れている債権者ではなく、そもそも催告をする必要はない債権者であるから、789条2項の催告を受けなかったことの要件の前提を欠くといえる。
したがって、Pは甲社に対して759条2項により不法行為に基づく損害賠償債務の履行を請求することはできない。
もっとも、損害または加害者たる債務者をしらない不法行為債権者との関係では、そもそも免責的債務引受が生じないのであるから、これらの不法行為債権者は分割後は、会社分割の両当事会社に損害賠償を請求することができる。
第2 設問(2)
1 まず、Qは吸収分割無効の訴えを提起することが考えられるが、分割会社に残存する債権者債権者異議手続による保護の対象外であり(789条1項2号)、提訴権者にはならないた、Qは吸収分割無効の訴えを提起できない。
2 Qは乙社に対して吸収分割を対象として詐害行為取消権(民法424条)を行使することが考えられる。
まず、財産権を目的とする法律行為であるか
確かに、組織再編上の行為であるが、吸収分割が事業に関して有する権利の義務の全部または一部を承継させること法律行為であるとすると財産権を目的とする法律光であるといえる。
次に、Qは本件の分割契約前から、甲社に対して4000万円の貸金債権を有するといえ、詐害行為前に被保全債権が存在している。
では、詐害性が認められるか。詐害性は詐害行為と詐害意思を相対的に判断する。
会社分割後の甲会社の資産総額(帳簿価額)は3000万円、負債総額1億円である、会社分割後の甲社はのれん代を計上し、資産の評価換えをしても、実質的な債務超過状態であったといえ、甲社は債権者であるQを害する認識していたといえ詐害意思が認められ、甲社は会社分割後は実質的債務超過をしていることになるから、債務者の責任財産を減少させる法律行為である詐害行為が認められる。
よって、詐害性が認められる。また、乙社は分割契約の当時会社であるから、悪意である。
したがって、Qは吸収分割を対象として詐害行為取消権を行使することができる。
もっとも、個々の財産は移転した事業に組み込まれている可能性が高いので現物返還を求めると、事業運営に支障が生じる可能性があるから、価格賠償によることになる。
続いて、乙社が甲社の商号を実質的に引き継いでいると評価される場合には、Qは会社法22条1項の類推適用により、乙社に債務の弁済を請求することができる。
吸収分割は事業譲渡ではないが、会社法22条1項の趣旨は、事業主の交代を知らないか、あるいは知っていた時でも称号の続用がある場合、営業に含まれる自己の債務も引き受けられたものと考える債権者の信頼を保護するものである。
とすれば、吸収分割も事業譲渡もいずれも法律行為による事業の移転であり同条の趣旨が妥当するため、会社法22条1項を類推適用すべきである。
甲社はもともと鞄メーカーであり、鞄部門を有していた。そして、まだ鞄部門は再建の余地があるから吸収分割により乙社に鞄部門を移転している。とすれば、乙社は実質的に甲社の商号を実質的に引き継いでいるといえ、Qは会社法22条1項の類推適用により、乙社に債務の弁済を請求することができる。
最後に、Qとしては甲社がQからの債務の履行を免れるために吸収分割を行ったとして乙社に対して法人格否認の法理により甲社と乙社を同一視して、Qは4000万円の請求をすることができる。
法人格は団体の法律関係を単純化するための法技術であり、乱用してる場合には、権利濫用(民法1条3項)により法人格を否定する。
法人格を否定するためには、支配要件と目的要件を満たす必要がある。
本件では、別法人化には、鞄部門はまだ再建の余地があるため自力で立て直すことを目的とするために旧分割をしているのであり、違法な目的は存在しない。そのた、目的要件を満たさない。
よって、乙社の法人格は否定されず、乙者と甲社は同一視されず、Qは4000万円を請求できない。
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