法22条2項に規定する無償による資産の譲渡又は役務提供の趣旨の論証
2013年8月23日 《論証》租税法○法22条2項に規定する無償による資産の譲渡又は役務提供の趣旨
①適正所得算出説
法22条2項に規定する無償による資産の譲渡又は役務提供に係る収益の額を益金に算入する趣旨は、収益とは外部からの経済的価値の流入であり、無償取引の場合には経済的価値の流入がそもそも存在しないことにかんがみると、この規定は正常な対価で取引を行った者との間の公平を維持し、同時に法人間の競争中立性を確保するために、無償取引からも収益が生ずることを擬制した創設規定であると解すべきである(適正所得算出説)。
②同一価値移転説
無償取引の場合、相手方には通常の対価相当の利益が帰属することになるから、これに相当する価値が移転流出したことをもって、収益の実現があったものとみられるとする説
→要するに、寄付金に該当するような利益提供があったと考える。
○高額譲渡
高額譲渡の場合は、時価と譲渡価額の差額分を譲受人が資産を譲渡したのと実質的に同視できる経済的効果をもたらすため、譲受人が時価と譲渡価額の差額分を無償の資産の譲渡を行っていると言え、時価と譲渡価額の差額分が益金として計上され、時価と譲渡価額の差額分は同時に寄付金として限度額の範囲内で損金に計上される。
↳低額譲渡は譲渡人で、高額譲渡は譲受人の問題であり、それぞれの処理をCHECK
法人間の関係については税法基本講義をチェックする。
所得税法60条の趣旨の論証②
2013年8月22日 《論証》租税法・ゴルフ会員権贈与事件
〈事案〉
父が子にゴルフ会員権を贈与し、子がゴルフ会員権を取得するためにゴルフクラブに支払った名義書換手数料(本件手数料)が父と子どちらの取得費となるかが問題となった事案
〈判旨〉
所60条1項の文言を形式的に解釈すれば贈与の前後を通じて受贈者が引き続き資産を所有していたとみなされ、受贈者が資産の取得に要した費用(所38条1項)は無視されることになる。
しかし、譲渡所得に課税する趣旨は資産の増加益をその資産の所有者の所得として、所有者の支配を離れて他に移転することを機会に清算して課税するものである。所60条1項の趣旨は、贈与等にあっては、その時点では資産の増加益が具体的に顕在化しないため、増加益に対して課税繰延することにある。すなわち、取得費の範囲を限定するものではない。受贈者が贈与者から資産の取得のために要した費用は受贈者の保有期間中の増加益において計算される性質を有する。
よって、受贈者が贈与者から資産を取得するための付随費用の額は受贈者の資産の保有期間に係る増加益の計算において取得費に算入されるべき性質のものであり、本件手数料はこのような費用にあたる。
所得税法60条の趣旨の論証①
2013年8月21日 《論証》租税法・贈与等による取得と取扱費の引継ぎ(所60条)
所60条の趣旨は、保有期間中の増加益の課税繰延にある。《問題点》
個人Aが個人 Bに資産を贈与した場合、現行法上Aについて譲渡所得の計算上を行わず、かつ、Bが取得した資産の取得費はAの取得費を引き継ぐことは条文操作としてどう説明するか。
《解決》
所33条1項の「譲渡」には無償譲渡が含まれるとしつつ、対価は0円の譲渡であるため、この収入金額は常に必ず贈与される資産の時価の2分の1未満であり、かつ、その取得費等の合計額を下回るため59条2項の適用対象となる結果、贈与者であるAについて譲渡損失が無視され、かつ、60条1項2号の規定によりAの取得費を引き継ぐとする。
課税繰延は課税時期を遅らせることをいう。
「延」ってあるように延期させるってこと。
譲渡費用:土地改良区決済金事件
2013年8月20日 《論証》租税法・土地改良区決済金事件(最判18年4月20日)
〈事案〉
Xは農地を農地法などの許可を停止条件としてB社に譲渡した。Xは土地改良法42条2項に基づいて協力費を支払った。この協力費を譲渡費用に含めた。Yは譲渡費用に当たらないと更正処分。
〈判旨〉
譲渡所得に対する課税は、資産の値上がりによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得としてその資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会にこれを清算して課税する趣旨のものである。
しかし、抽象的に発生している資産の増加益そのものが課税の対象となっていない。原則として、資産の譲渡により実現した所得が課税の対象となっているものである。そうだとすれば、資産の譲渡に当たって支出された費用が所得税法33条3項にいう譲渡費用にあたるかどうかは、一般的抽象的に当該資産を譲渡するために当該費用が必要であるかどうかによって判断するのではなく、現実に行われた資産の譲渡を前提として、客観的にみてその譲渡を実現するために当該費用が必要であったかどうかによって判断される。
本件では、Xは本件土地を転用目的で譲渡するにあたっては本件決済金の支払いをしなければならないのである。本件売買を実現するために必要な必要であるといえる。
また、協力金は買主にとって転用後の目的の事務を遂行するために必要な費用である。それを売主であるXが負担することによって、譲渡価格が上昇している。
よって、本件決済金は譲渡費用に含まれる。
ただし、賦課金等の未納入部分は譲渡費用に当たらない。
取得費:借入金利子の論証
2013年8月19日 《論証》租税法○借入金利子の取得価額算入(最判平成4年7月14日、最判平成4年9月10日)
資産取得のための借入金の支払利子は家事費であって、原則として居住の用に供される不動産の取得費に該当しないとしつつ、借入金の利子のうち、居住のため当該不動産の使用を開始するまでの機関の対応するものは当該当該不動産をその取得に係る用途に供する上で必要な準備費用であって取得費に含まれる当該不動産を取得するための付随費用にあたる。
金子説もチェックする
取得費:財産分与により取得した土地の取得費の論証
2013年8月18日 《論証》租税法○財産分与により取得した土地の取得費(東地平成3年2月28日)土地を譲渡した時の問題
離婚に伴う財産分与として資産を取得した場合には、取得者は財産分与請求権という経済的利益を消滅される代償として当該資産を取得したこととなるから、その資産の取得に要した金額は、原則として、右財産分与請求権の価額と同額になるものと考えるのが相当である。
○取得費等の計算(所38条)(H18)
①趣旨
原資の回復として認められるものである。
☆補足☆:類似概念
必要経費と類似する概念
②「取得費」の解釈
取得費とは、資産の取得に要した金額のことであり、客観的価格を構成すべき金額に加え譲渡費用の控除も認めていることからすれば広く解釈され、付随費用も含まれる。
☆要注意☆
簿価と問題文あれば、取得費のことをさす場合がある。
☆補足☆:簿価の定義
簿価は帳簿価額の略称。
債務の確定(法22条3項2号括弧書き)の論証
2013年8月16日 《論証》租税法○債務の確定
損金として算入される「費用(法22条3項2号)は公正妥当な会計処理基準に従い、原則として損金に算入される(法22条4項)。
法22条3項2号括弧書きは、償却費以外の費用に債務の確定を要求している。
債務の確定が要求される趣旨は、費用は期間対応の支出であるから恣意的に計上される恐れがあり計上時期は客観的にする必要があるからである。
債務の確定は、①債務が成立していること②当該債務に基づき具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること③金額を合理的に算定できることが必要である(株式会社ケーエム事件・地判昭和56・11・5)
無償の役務提供:清水惣事件の論証
2013年8月15日 《論証》租税法・清水惣事件
〈事案〉《論証》(適正所得算出説)
親会社が子会社に無利子融資をした事案である。
「役務提供」には、人的労務提供のみならず資産の融資なども含む。
本件の無利子融資も「無償の役務提供」にあたる。
資産の無償譲渡、役務の無償提供について定める法人税法22条2項の趣旨は正常な対価で取引を行った者との間の公平を維持し、同時に法人間の競争中立性を確保するために、無償取引からも収益が生ずることを擬制した創設規定であると解すべきである(適正所得算出説)。また、資産の無償譲渡、役務の無償提供は、実質的にみた場合には、資産の有償譲渡、役務の有償提供によって得た代償を無償で給付したのと同じである。正常な対価で取引を行った者との間の負担の公平を維持するために、収益発生事由として規定したのであるとする(2段階説)。
とすれば、課税の公平、競争中立性を保つために無利子融資の場合は正常な対価といえる利息相当額を収益として擬制すべきであるといえる。
よって、利息相当額を親会社の益金として計上し、一方で、利息相当額は無償の経済的供与として寄付金(法37条7項)となるため、損金算入限度額内で親会社に損金に算入される。
もっとも、正常な対価で取引を行った者との間の公平、法人間の競争中立性を害さないような、借主から対価性を有する経済的利益または、経済的利益を手放す合理的理由がある等特段の事情があれば、適正な利率による利息相当額の収益は発生せず益金として計上しない。→この場合は、正常な対価を得ている。
長いので短くする。
無償の資産の譲受:債権放棄(判例を参考に)
2013年8月14日 《論証》租税法〈事案〉
B社がA社に対してA社に対する債権を放棄した。
この債権放棄は免除(民法519条)といえるが、債務免除益としてA社の益金に計上されないか。
〈判旨〉
1 取引の解釈(純資産増加しているか)
法人税法22条2項は無償による資産の譲受けその他の取引から収益が生ずる旨を定めている。
このことから、無償の経済的価値の流入は広く益金に含まれる。
本件の債務免除益も経済的価値流入であるから益金に計上される。
2 益金の計上時期
ある収益からどの事業年度に計上するかは、一般に公正妥当と認められる会計処理基準に従うべきである。
そこで、法人税法22条4項の解釈として、収益(損失等)はその実現があった時、すなわち、その収入すべき権利が確定した時の属する年度の益金(損金)に計上すべきものである。
債務免除(民法519条1項)は単独行為である。そのため、債務者に免除の意思表示を受けた時点(到達時)で効果が発生する。
とすれば、債務者が免除の意思表示を受けた時点で収入する権利が確定したといえ、免除された債権額を益金に計上することになる。
☆補足☆:免除の不要式性
↓LECのスタッフが運営しているブログで租税法選択者の記事がありました
http://lecsbe.blog40.fc2.com/blog-entry-44.html
こういうことしてる予備校のスタッフは合格に近い人だと(勝手に)思っているので
今後の記事に大いに期待!!!
㉕くらいまで連載して欲しい(笑
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譲渡所得:譲渡担保の論証
2013年8月13日 《論証》租税法○譲渡担保:譲渡の要件が問題になる
担保の目的で資産を形式的に譲渡しただけでは、まだ譲渡所得が発生する譲渡とはいえず、債務不履行などが生じて所有者がもはやその資産を取り戻せないことが確定した時に、初めて「譲渡」があったと考える。
∵返還予定がされることが法的に義務付けられており、完全な支配の移転がないからである。
「譲渡」といえるためには経済的価値の流入が必要である。
譲渡担保には経済的価値の流入はない。
∴「譲渡」ではない。
事業所得と雑所得の区別の論証②
2013年8月12日 《論証》租税法・会社取締役商品先物取引事件
〈事案〉(H23)
先物取引によって得た所得が、一時所得でなく雑所得でもなく事業所得であるとした事案
〈判旨〉
清算取引は対価を得て継続的に行った売買取引。利益3600万円という大量かつ反復継続した営利目的の行為∴社会通念上対価を得て継続的に行う事業である→事業所得である
賭博と違い、清算取引は差金に授受を目的とする売買であって価格の騰貴が、下落により損得するものであるから、その危険度は五分五分であり、しかも価格の上下の差額分のみ損得するに比し競馬、競輪は払戻しを得るか得ないかであり危険度は清算取引より高い。しかも、あたらない場合は全損する。清算取引は所得の安定性が低いとはいえない。
そして、本質は商品の売買である。なので、社会的客観性からみれば先物取引は賭博類似のものとはいえない
また、(継続性の要素の中で)一時所得かは他の堅実な営業と比較して利益の発生が不確実で偶発的であるからといって、反復継続として大量に行った取引まで事業性を否定することはない。
事業所得と雑所得の区別の論証①へ→http://82045.diarynote.jp/201307040215438609/
事業所得と譲渡所得との区別の論証
2013年8月11日 《論証》租税法○事業所得と譲渡所得との区別
〈問題の所在〉
事業所得と譲渡所得では、担税力に差があり、計算方法や控除額や課税方法に違いが出てくる。そのため、両者の区別が問題となる
〈判断基準〉
譲渡所得が所有資産価値の増加益を本質とする資産性所得であり事業所得が資産勤労結合所得である以上、両者の本質的相違点が人的労務の提供の有無にある。
具体的には、反復継続性と企画遂行性によって判断する。
事業所得の意義の論証
2013年8月10日 《論証》租税法○事業所得(27条)の意義
事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得をいう
☆要注意☆:付随活動
納税者が本来の事業活動による収入のほかに、それに付随する活動によって収入を得ている場合には、それらの収入の総額は原則として事業所得に該当する。
○違法所得(サンプル、H21)
所152条と所令174条は違法な所得が含まれることが課税対象であることが前提としている。事実としての純資産の増加が所得であるから、法律上の性格を問わない。そのため、純資産の増加の事実が肯定される。
違法な所得も現実の管理支配が及べば所得として扱う→利息制限法違反利息判決参照
利子所得:株主優待金の論証
2013年8月8日 《論証》租税法○「預金の利子」の解釈
本件株主優待金は「預金の利子」にあたるか。
「預金の利子」とは、金銭消費寄託(666条但書)のことをいい金銭消費寄託か金銭消費貸借にあたるかという私法上の契約の性質によって判断する。
☆あてはめPOINT☆:《株主優待金》金銭消費貸借契約と金銭消費寄託契約の区別
金銭消費寄託は金銭価値の安全な保管を目的とする点で金銭消費貸借契約とは異なる。定期に定率で多数の者に同じ条件で支払われる点に特色がある。←これらの点を考慮して利子所得か判別する。
考慮要素:期間の長短、返還期限の定めの有無、払い戻しの方法等金銭受け入れの形態
よって、本件株主優待金は消費貸借ではなく,消費寄託の経済的性質を有しているから、「預金の利子」である。
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